土曜日, 4月 27, 2024
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中西部太平洋マグロ・カツオ類漁業のMSC漁業認証が継続の危機に

中西部太平洋でのマグロ・カツオ類漁業が長期的な持続可能性を確保するために必要となる事項について進展のないまま、重要な政府間会合が終了しました。しかし、カツオと南太平洋のビンナガマグロ漁業については、各国の協働によって認証継続の可能性が残されています。

今月開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合で望ましい進展が得られなかったことにより、中西部太平洋(WCPO)で操業する28の漁業のMSC漁業認証が停止となるリスクが高まっています。

WCPOで操業する28のMSC認証取得マグロ・カツオ類漁業にはすべて、2023年6月までに漁獲方策が採択されることという条件が付けられています。

漁獲方策とは、資源の長期的な管理を確実にするためのルールで、健全な魚種資源が減少し始めた場合の「セーフティネット」の役割を果たすものです。漁獲方策は健全な漁業管理の基本であり、特に地理的な境界をまたぐマグロ・カツオ類のような高度回遊性の魚種にとっては、資源の将来的な健全性を左右するものです[1]。

今月開催されたWCPFCに加盟する26カ国と地域の代表団による年次会合[2]は、MSC漁業認証継続の条件を満たすために必要な科学的根拠と管理措置の合意に向けて前進するための重要な機会でした。

しかし、漁獲方策に関する交渉は、カツオと南太平洋ビンナガマグロについては2022年12月まで、キハダマグロとメバチマグロについては2024年まで延期されることになりました。進展は見られなかったものの、WCPFCが2022年8月に2日間の科学管理会議を開催することに合意したことから、2022年12月に間に合うよう漁獲方策に関する勧告が出される可能性はまだ残されています。

これにより、カツオとビンナガマグロ漁業については、2023年6月以降もMSC漁業認証が継続される可能性も出てきましたが、それはあくまでも2022年12月の年次会合で漁獲方策の合意と採択がなされた場合のことです。キハダマグロとメバチマグロに関しては、WCPFCが新たな漁獲方策の採択を2024年まで延期したため、これらの資源でMSC漁業認証を取得している漁業は、2023年6月に審査機関によって認証が停止される可能性が高くなってきました。

このように遅々として進まない状況は、厳格なMSC漁業認証規格を満たす漁業で獲られたマグロ・カツオ類の調達に取り組んでいる小売業者、水産企業、その他のサプライチェーン企業にとっては、大変もどかしいことです。10月には112の企業がWCPFCの代表団長宛に、すべてのカツオ・マグロ類資源を対象とした包括的な漁獲方策を策定するための行動を加速するよう要望書を提出しました。これはMSC認証に対する企業の評価の表れと言えます。2020年に12億7千万米ドル相当のマグロ・カツオ類を扱った小売業者とサプライチェーン企業からなる団体であるグローバル・ツナ・アライアンスもこれを支持し、署名を連ねました。

WCPOからのマグロ・カツオ類の漁獲量は世界のマグロ・カツオ類漁獲量の半分以上を占めており、世界で最も商業的に重要な水産資源となっています。現在、MSC認証マグロ・カツオ類の85%がWCPOで漁獲され、そのうち78%はカツオです。MSC「海のエコラベル」を付けて販売されるマグロやカツオ製品の量は、過去5年間で4万トンから11万トンへと大幅に増加しています。

持続可能なMSC認証水産物への需要の高まりは、すでにこの地域の漁業慣行の改善促進につながっています。例えば、フィジーのビンナガマグロとキハダマグロ漁業などでは、混獲を削減するためのさまざまな対策が導入されました。マグロを漁獲するためのはえ縄を、誤ってサメを巻き込む可能性があるワイヤーから、サメが噛み切ることのできるモノフィラメント製の釣り糸に変更しました。また、サメとの接触を回避するために、より深い水域で漁を行っています。電子モニタリングシステムの使用や、50隻以上の漁船に船上カメラを設置するなど、透明性と説明責任も強化されました。

MSCがほかの多くのパートナーとともにWCPFCに対して求めるのは、開催が決まった8月の科学管理会議および定期開催の科学技術コンプライアンス委員会で、新たな漁獲方策に向けて具体的な進展を図ることと、2022年12月に開催される次回の年次会合で漁獲方策に合意し、採択することです。MSCはまた、長期にわたる海洋の持続可能な管理に関心を持つすべての人々に、この取り組みを支援するよう呼びかけています。合意に至らなければ、この水域のMSC認証取得漁業の認証が停止されるばかりか、WCPOにおけるマグロ・カツオ類資源の長期的な健全性までもが疑問視されることになり、マグロ・カツオ類を扱う企業は持続可能な調達の公約を果たすためにほかの調達先を探すことを余儀なくされます。

MSCの最高責任者であるルパート・ハウズは次のように述べています。
「今回のWCPFC年次会合の結果は、MSC認証に求められる高いレベルの持続可能性を達成し、支持するために懸命に努力してきた漁業、小売業者、水産企業、サプライチェーン企業にとって不本意なものとなりました。世界中のスーパーマーケットやマグロ・カツオを扱う水産企業から、MSC認証取得漁業が認証を維持できるよう、かつてないほどの支持が寄せられています。これは、経済的圧力や新型コロナウイルス感染症拡大の影響にもかかわらず、持続可能な水産物に対するマーケットからの需要、そして調達への取り組みが高まっていることを示すものです。MSC認証は、マーケットが求める保証を提供します。MSCはSDGs(持続可能な開発目標)の目標14『海の豊かさを守ろう』の達成に取り組んでいるすべての人々に対し、持続可能な漁業管理を支える漁獲方策と管理ルールの策定と採択を加速させるために、自国の政府と代表団にできる限りの努力をするよう促すことを求めます」

注記
1.     漁獲方策がなければ、持続可能な漁業の漁獲対象資源が将来的にも持続可能であることを保証することができません。インド洋で操業するモルディブのカツオ・キハダマグロ漁業は、2016年にキハダマグロ漁業に対するMSC認証が停止となりました。以前は健全な資源でしたが、各国政府が2016~17年に漁獲方策に合意できなかったためです。その後、過剰漁獲を防ぐための休漁期や漁獲制限ルールが設けられないまま、資源は急減しています。
2.     WCPFCの第18回年次会合が2021年12月1日から7日まで開催されました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響でリモート開催となりました。WCPFCに加盟している26の国と地域はオーストラリア、中国、カナダ、クック諸島、EU、ミクロネシア連邦、フィジー、フランス、インドネシア、日本、キリバス、韓国、マーシャル諸島、ナウル、ニュージーランド、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、フィリピン、サモア、ソロモン諸島、台湾、トンガ、ツバル、アメリカ合衆国、バヌアツです。WCPFCについて詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

MSC(海洋管理協議会)について
将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所を置き世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は世界約100カ国で48,000品目以上、日本では900品目以上が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、独立した審査機関による審査を通じて実証することが求められます。

詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください:https://www.msc.org/jp

MSC「海のエコラベル」について
MSCの厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それが「海のエコラベル」です。

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