金曜日, 7月 11, 2025
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WWFジャパン「ゴーストギア調査隊」、高さ3メートル・幅1メートルの巨大な漁業系プラスチックごみの塊を海中から引き上げ

ーー長崎県五島市多々良島付近

写真:ダイバー(WWFジャパン ヤップ・ミンリー)が手にしているのは1メートルの長さのものさし

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、昨日2025年7月10日(木)に、長崎県五島市多々良島付近で確認したゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)の回収作業を地元の漁業関係者、ダイバー、五島市等の協力を得て行ないました。回収したゴーストギアは、漁網にロープ類や、プラスチックかごのような生活ごみ、サンゴの断片、藻類、カイメン(海綿)などが絡まったり、付着したりしている縦約3メートル、幅約1メートルの塊です。今後、洗浄や分別作業をして、ごみの状況や由来を詳しく調べていきます。

本ゴースギアの存在は、地元の漁業関係者やダイバーには数年前から知られていましたが、回収には、様々な障害があり、手つかずの状況でした。ゴーストギアの実態を把握し、海洋汚染の解決と持続可能な水産業を目指すWWFジャパンの「ゴーストギア調査隊」の活動で、今年の4月に詳しい状況を確認しました。近隣にある世界最大級のオオスリバチサンゴ方面に流れて傷つけてしまう可能性や、漁業区域への侵入、船の航行の妨害やダイバーたちへの危険性などがあったため、昨日10日に回収作業を実施しました。

■回収したゴーストギアについて

(引き上げ前)

縦3メートル、幅1メートル。上部に浮子(うき)が付いて浮力があり、下部は岩やサンゴに引っかかっている。

(引き上げ準備中)

ゴーストギアにロープを巻き付け、コンパクトにして運びやすいように準備。

(引き上げ中)

目の細かい網でゴーストギアを包みユニック船(クレーンを搭載した作業船)で引き上げ。

(引き上げ後)

複数の漁網が絡み合って、海藻類が付着し、エビやカニ、サンゴなどが引っかかっている

※写真や映像の提供をご希望の方は、WWFジャパン広報までお問合せください。(©WWF-Japan)

■ゴーストギア調査隊とは

ゴーストギア調査隊は、ダイバーが自治体、漁業者と協働して、潜水調査を実施し、ゴーストギア(漁業系プラスチックごみ)の実態を把握して、持続可能な水産業を目指すWWFジャパンのプロジェクトです。2023年7月よりスタートし、全国7ヵ所(静岡県西伊豆町・伊東市、宮城県女川町、長崎県五島市、長崎県対馬市、山形県酒田市(飛島)、熊本県天草市、和歌山県日高町)で展開しています。

https://www.wwf.or.jp/press/5428.html

■WWFジャパン 専門オフィサーのコメント
自然保護室 海洋水産グループ ヤップ・ミンリー

ゴーストギア調査隊では、日本近海の特徴の異なる7海域を選定して調査を進めています。これまで知られていなかった日本のゴーストギアの実態が、少しずつ見えてきました。まずは日本でゴーストギアの存在を確認したことは、大きな一歩です。ゴーストギアが海中で魚介類を獲り続けてしまうゴーストフィッシングや、ゴーストギアのマイクロプラスチック化、サンゴなどの海洋生態系への悪影響、さらに海域ごとにゴーストギアの特徴や周辺環境への影響が異なることも確認できています。

今回の五島での作業は初めての大型ゴーストギアの回収で、プロセスのノウハウを学んだ貴重な経験でした。複数の網が絡み合ってゴーストギアが大型化したプロセスも垣間見え、今後の分解作業の中で、ゴーストギアの実態についても多くの知見が得られそうです。一方で、持ち主不明の大型ゴーストギアの回収は、費用や手間、関係者調整など、想像以上の苦労がありました。漁業資源や船の航行、海洋生態系等に負の影響を及ぼすゴーストギアへの対策について、行政の後押しが求められることを再確認しました。

7海域全てのゴーストギア調査が終わった暁には、調査結果をもって、より広範囲にわたる定量調査の必要性を監督官庁に訴え、各調査地域の声を踏まえ、ゴーストギア問題の解決につながる仕組みづくりや制度整備についても提案できたらと考えています。

■プラスチック汚染とゴーストギアの問題

ゴーストギアは放棄、逸失、もしくは投棄されて海に流出した漁網などの漁具由来のプラスチックごみです。海洋プラスチックごみの約1割を占め、海洋生態系や漁業資源に悪影響を与えるだけでなく、船の航行を妨げるなど、観光や地域経済にも大きな被害を与えます。また、日本の海岸に漂着したプラスチックごみのうち漁具やブイ(浮体)などの漁業系プラスチックごみは重量比で5~6割を占めるというデータもあり(注1)、海洋国家であり、水産業が盛んな日本にとっては特に大きな課題です。

(注1)環境省(2024)令和4年度漂着ごみ組成調査データ 取りまとめの結果について

https://www.env.go.jp/content/000224791.pdf

■ご参考

  • 「ゴーストギア調査隊」発足――漁業由来の海洋プラスチックごみをダイバーが調査 静岡県西伊豆町を皮切りに、全国へ展開計画(2023年7月14日、WWFジャパンプレスリリース)
    https://www.wwf.or.jp/press/5368.html

  • 海洋プラスチック問題への取り組み「ゴーストギア調査隊」活動開始(2023年7月13日、WWFウェブサイト掲載記事)

    https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5362.html

  • 報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ』(日本語版)を発表(2021年7月、WWFウェブサイト掲載記事)
    https://www.wwf.or.jp/activities/lib/4680.html

WWFについて  WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。 https://www.wwf.or.jp

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