デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」に3年連続で採択
当社は、2023年度より参画している愛媛県の地域課題解決プロジェクト「愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト(トライアングルエヒメ)」に、今年度も採択されたことをお知らせいたします。昨年度の温州みかん・サトイモ・アボカドの品質・収量向上を目指すプロジェクト(※1)に続き、今年度は中晩柑(※2)、サトイモを対象とした土壌水分の可視化及び潅水の最適化による品質・収量の安定化に向けたスマート農業の実装を行います。
(※1)2024年9月17日付報道発表資料「IIJ、愛媛県でみかん・サトイモ・アボカドの収量向上を目指しスマート農業実装検証」:https://www.iij.ad.jp/news/pressrelease/2024/0917-2.html
(※2)中晩柑(ちゅうばんかん):1月から5月ごろに収穫される、温州みかん以外の柑橘(かんきつ)の総称
昨年度は、温州みかん産地の真穴(まあな)柑橘共同選果部会(真穴共選)において、240haに及ぶみかん畑全体をカバーする LoRaWAN®(※3)ネットワークと、120台の土壌水分センサーによるデータ分析基盤を構築し、土壌水分データの可視化を実現しました。この成果として、みかん畑の中で土壌条件が違う区域それぞれに対し、最適な灌水指標を示すことで増収に寄与しました。また、スマート農業の対象をサトイモ、アボカドさらにレモンと広げ、愛媛県内において様々な地域・品目をまたいだユースケースの普及・拡大を進めてきました。
今年度は、新たに愛媛県で生産される柑橘類の中でも特に人気の高い「せとか」、「紅まどんな」、「甘平」等の中晩柑種に取り組む、松山市青年農業者連絡協議会北条支部(HAPP)を実装先とし、土壌水分量に加え気象データ等の活用を通じて、品質・収量の向上を目指します。また、昨年度から取り組んでいるサトイモについても、サトイモ点滴灌水などの新たな手法を用いて適切な土壌水分量を管理し、継続して収量の向上に取り組みます。
これらの実装を通じ、愛媛県におけるデータを活用したスマート農業のさらなる普及推進に向け、様々な事業者と協力を図りながら横展開モデルの構築を目指していきます。
(※3)LoRaWAN®(ローラワン):免許が不要な周波数920MHz帯で利用でき、低消費電力かつ長距離通信を特長とするIoT/M2Mに最適な無線通信技術。LPWA(Low Power, Wide Area)の無線通信プロトコルの一種。
2025年度の取り組み
柑橘
スマート農業の新たな実装先となる松山市北条地区では、愛媛県における柑橘の主力品種として人気の高い中晩柑種の「せとか」「紅まどんな」「甘平」などを中心に様々な品種が栽培されています。
今年度は、松山市青年農業者連絡協議会北条支部(HAPP)の協力のもと、北条地区にLoRaWAN®を用いたLPWA網を整備し、園地に約50台の土壌センサーおよび気象センサーを設置して土壌水分量のデータ収集、さらにそのデータの分析を進めることで、収量・品質の安定化に向けた灌水オペレーションの最適モデルの確立を目指します。特に、高級品種として贈答品などにも用いられることが多い中晩柑種において、サイズを確保しつつ糖度を向上させることで、収益向上が期待できます。
サトイモ
愛媛県は、サトイモの出荷量全国第4位(令和5年実績:8,500t)の産地であり、高い収益性が見込める作物であることから県内においてもサトイモの生産に取り組む生産者が増加しています。サトイモ栽培では、土壌水分の管理が特に重要で、最適な水管理を行うことで大きく収量を増やすことが可能とされています。
今年度は昨年度に続き、株式会社中温およびJAおちいまばりの協力を得て、西条市丹原地区と今治市朝倉地区において、水ポテンシャル(※4)センサーとLoRaWAN®ネットワークを活用し、正確な土壌水分の測定とデータモニタリングを行います。新たな手法として、実装先の1つである株式会社中温で、作物が必要とする量の水を時間をかけて少しずつ与える「少量多灌水」を行うための点滴灌水設備を導入し、慣行手法より品質・収量が安定化することを示します。愛媛県のサトイモ栽培においては初の実装となります。
(※4)水ポテンシャル:植物の水分保持力を表す値。水ポテンシャルが大きい方から小さい方に水は移動するため、土壌中の水ポテンシャルが小さいと土壌に水が強い力で保持され、植物にとってはその土壌から水を吸水しにくくなる。
当社は、ネットワークやクラウド、セキュリティサービスといった自社サービスを活用し、製造業、農業、ホーム・見守りなどの分野で様々なIoTサービスやソリューションを提供しています。特に農業分野では、2017年から静岡県で実施した水稲栽培のスマート農業技術に関する実証事業をはじめ、そこで得られたLoRaWAN®の技術的知見やノウハウを活かして、全国自治体のスマート農業プロジェクトに積極的に参画し、地域課題の解決に向けた取り組みを推進しています。愛媛県での取り組みも3年目に入り、これまで培ってきた技術的知見やノウハウを活かしながら、今後も中長期的に地域の発展に貢献をしてまいります。
トライアングルエヒメについて
愛媛県内を実装フィールドとして、多様な産業領域における地域の課題に対して、愛媛県が民間事業者(コンソーシアム含む)から企画提案を募集し、デジタル技術の実装や県内への横展開の実現性等の高い提案を採択。採択プロジェクトには、現地の事業者とコンソーシアムを組成し、課題解決につながるデジタル・ソリューションの実装検証を行います。
当事業は、令和7年度 トライアングルエヒメ推進事業「デジタル実装加速化プロジェクト」の採択事業として実施するものです。事業の詳細についてはWEBサイトをご覧ください。 https://dx-ehime.jp/
