~生活者の産地イメージと産出額のギャップに見る産品ブランディングの可能性~
本調査は、生活者が農水産物に対して想起する産地イメージを明らかにし、産地イメージと産出額のギャップを把握することで、地方自治体における農水産物のブランド戦略策定の基礎となることを目的にしています。
本調査では、2019年度「生産農業所得統計」(農林水産省)の主要な農水産物から産出額の高いものを中心に44品目を調査対象産品としています。今回、44品目の中から「有名な産地が複数ある」かつ「有名な産地が東西区分に分布している」農水産物の例として「ねぎ」(玉ねぎを除く)と「メロン」についての結果を発表いたします。
- <調査結果概要>
- 生活者が最も思い浮かべる産地イメージ “ねぎ”は「群馬県」、“メロン”は「北海道」。
- 東日本と西日本で異なる“ねぎ”の産地イメージ。“メロン”は東西共通の結果に。
- “ねぎ”の産地イメージ、地域別でも上位は「群馬県」。中部・近畿がイメージの分かれ道。
- “ねぎ”のイメージ1位「群馬県」の産出額は全国7位。産出額と直結しない産地イメージ。
生活者が最も思い浮かべる産地イメージ “ねぎ”は「群馬県」、“メロン”は「北海道」
全国47都道府県の男女9,143人を対象に「ねぎと言えば、〇〇県?」と聞いた結果、「群馬県」と答えた方が19.6%とトップとなり、続いて「埼玉県」 19.0%、「京都府」 13.1%という結果になりました。
また、「メロンと言えば、○○県?」と聞いた結果では、「北海道」と答えた方が55.3%、続いて「茨城県」16.3%、「静岡県」7.2%という結果となっています。
ねぎの上位3府県には、有名な銘柄が存在しており、群馬県には「下仁田ねぎ」、埼玉県は「深谷ねぎ」、京都府は「九条ねぎ」など、すぐに思い浮かべられる産品ブランドが多かった地域がイメージとして挙げられたと考えられます。
同様に、メロン上位の北海道では、「夕張メロン」「富良野メロン」「らいでんメロン」、茨城県では「アンデスメロン」「イバラキング」など数多くの種類が生産されており、静岡県は「一木一果」と呼ばれ方法で栽培されている「クラウンメロン」などが有名です。
産地イメージ上位の産品ブランドには、産地の地域名がブランド名に入っていることが多く、生活者の産地イメージにも影響を与えていると考えられます。
東日本と西日本で異なる“ねぎ”の産地イメージ。“メロン”は東西共通の結果に。
全国47都道府県を東日本、西日本に分けて、それぞれの在住者別に産地イメージをみた結果では、東日本在住者は「ねぎ」と言えば、「埼玉県」と答えた方が29.5%と最も多く、続いて、「群馬県」 24.8%、「京都府」 6.8%という結果となっています。また、西日本在住者では、「京都府」 20.3%、「群馬県」 13.7%、「埼玉県」 7.0%の順となっており、「ねぎ」は東と西に分けると順位が全国順位と入れ替わるという現象が起きています。
一方、「メロン」は全国・東西区分共に同じ都道府県が並ぶ結果となっており、全国的に共通の産地認識を生活者が持っていると言えそうです。
“ねぎ”の産地イメージ、地域別でも上位は「群馬県」。中部・近畿がイメージの分かれ道。
「ねぎ」について全国を8つの地域に分けて細かく分析した地域別の結果では、中国地方を除いて、各地域の上位3位までの都道府県は、順位は異なるものの「群馬県」・「埼玉県」・「京都府」で占めている結果となっています。
3府県別にみると「群馬県」は、全国すべての地域別ランクで2位以上を確保しており、全国的にねぎと言えば群馬県の認識が生活者についていると言えそうです。また、「埼玉県」では、中部以北では2位以上を確保していますが、近畿以西では3位以下となります。「京都府」は、西日本全域で1位を確保していますが、東日本においては3位となっており、産地エリアによる影響力は、東西エリアで異なる傾向がみられます。
“ねぎ”のイメージ1位「群馬県」の産出額は全国7位。産出額と直結しない産地イメージ。
産地イメージと実際の産出額を比較してみると、産出額が産地イメージに直結していないことが分かります。
ねぎの産地イメージ(全国)1位の「群馬県」は、産出額としては全国7位となっており、産出額に比べて生活者の産地イメージが顕著に高く、産品ブランディングに成功していることがわかります。また、前述の東日本・西日本在住者別や8つの地域別の分析結果においても上位3位までに「群馬県」は位置しており、全国的かつ平均的に「群馬県=ねぎの産地」という認識の定着が浸透していることが伺えます。
一方、ねぎの産出額の視点からみると、産出額が最も高いのは「千葉県」ですが、産地イメージ(全国)では4位となっており、千葉県はねぎの産品ブランディングに可能性が感じられる結果となっています。
メロンにおいても同様に産出額と産地イメージのギャップが伺え、産地イメージ1位の「北海道」のメロン産出額は3位であり、産出額2位の「熊本県」の産地イメージは5位という結果になっています。
今回、農水産物の都道府県別の産出額と生活者意識を比較してすることで、産出額に比べて生活者の産地イメージが高い都道府県の農水産物、また、その逆の産出額は大きいが、生活者の産地イメージが低い都道府県の農水産物を明らかになりました。
生活者の理解、イメージを現在地として把握し、産出額と生活者の認識差が生じる要因を明らかにしていくことが、産品ブランディングを成功させる最初の一歩になりそうです。
■調査データ概要
①都道府県に関する調査より~農水産物の産地イメージ調査抜粋
調査対象 :全国のT会員20代~60代男女 9,143名
調査方法 :インターネットによるアンケート調査
調査期間 :2021年3月22日(火)~3月29日(月)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社
本レポートで使用した農水産物の産地イメージの回答サンプル数は、ねぎ4,604人、メロン4,539人。
②都道府県別農水産物の産出額
農林水産省「生産農業所得統計」(2019年度)
■農水産物の産地イメージ調査データのご案内
CCCマーケティング総研では、生活者が持つ農水産物の産地イメージ調査をCustomer Indicator(生活者意識指標)としてご用意しています。農水産物3商品まで無料でご案内していますので、詳しくはこちらのページをご覧ください。
https://www.cccmk.co.jp/thinktanks/column-31
■CCCマーケティング総合研究所の概要
名称:CCCマーケティング総合研究所(CCCマーケティング総研)
URL:https://www.cccmk.co.jp/thinktanks
設立:2020年7月21日
生活者の消費データ、インサイトや心の変化、さらには社会環境や経済情勢などを踏まえ、生活者のみなさまの「ちょっといいな」を実現するために、2020年に発足しました。
我々は『生活者の皆さまと共に歩み、共に考えるシンクタンク』として生活者の意識把握に努め、その声をもとに「データ」×「クリエイティブ」×「コンサルティング」のチカラによって皆さまの未来創造に伴走します。