脱炭素型酪農乳業の実現に向け、地域社会、地域市民、乳業メーカーによる、連携事業『道東カーボンファーミング研究会』が設立されました。初年度活動として2023年9月から日本一の生乳生産の地、別海町をフィールドとして牧場の土中炭素貯蓄量の調査を行います。
このたび、北海道庁が北海道農業の脱炭素化を進める「北海道カーボンファーミング推進協議体の発足に合わせて、一般社団法人道東SDGs協議会(会長:中山勝志)と明治ホールディングス株式会社(本社:東京都中央区 代表取締役社長CEO:川村和夫)および株式会社 明治(本社:東京都中央区 代表取締役社長:松田克也)(以下、明治グループ) は温暖化ガスの削減につながる脱炭素型酪農法として「カーボンファーミング」(※1)の評価・研究・実践を目的とし、生乳生産量 日本一の別海町(町長:曽根興三)をフィールドとして「道東カーボンファーミング研究会」(所在地:北海道別海町、以下、道東CF研究会)を設立しました。
酪農の現場からカーボンファーミングを試行し、これからの酪農業のあり方を社会に提言していく、地域社会、地域市民、乳業メーカーが連携する日本初の取組となります。
■「北海道カーボンファーミング推進協議体」(※2)構成員による研究会
2023年5月25日に北海道農政部は、北海道農業の脱炭素化に向けて、生産者をはじめ産学官金など、幅広い分野の関係者が集う情報交換と協働の場として「北海道カーボンファーミング推進協議体」を設立しました。
道東CF研究会を構成する一般社団法人道東SDGs推進協議会、明治グループ 、カーボンファーミングの調査フィールド・協力自治体である別海町は、それぞれが北海道庁が北海道農業の脱炭素化を進める「北海道カーボンファーミング推進協議体」の構成員となっております。
また事務局を務める株式会社TREE、土壌調査・分析を実施する日本工営株式会社、情報発信を担当する株式会社4CYCLEも構成メンバーであり、道東CF研究会は「北海道カーボンファーミング推進協議体」の構成員によるコラボレーションとなる取組です。
■ 道東CF研究会 主要関係者
●一般社団法人道東SDGs推進協議会
日本の生乳生産のカギを握る道東エリアにて、2018年に地域へのSDGsの普及啓発を担う有志が集う任意団体として設立。2023年6月、活動のさらなる発展を目指し、一般社団法人化しました。
• 所 在 地 :北海道野付郡別海町中春別307番地の2
• 代 表 者 :会長 中山勝志(有限会社中山農場 代表取締役会長)
事務局長 山本照二(養老牛山本牧場 代表取締役)
• 設 立:2023年6月
●明治グループ
明治ホールディングス株式会社と同グループで食品事業を担う株式会社 明治が道東CF研究会メンバーとして関わっていきます。本研究会の成果などを通じて、広く道内、国内の酪農家へカーボンファーミングの普及促進や酪農業の温室効果ガス排出削減を推進するとともに、乳製品の生産販売を通じて、消費者も参加する持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。
• 所 在 地 :東京都中央区京橋ニ丁目4番16号
• 代 表 者 :代表取締役社長CEO 川村和夫
• 設 立:2009年4月
●北海道別海町(推進支援オブザーバー)
別海町は、北海道の東部、根室管内の中央部に位置し、東西61.4km、南北44.3kmに広がる町です。面積1,319.63平方km(東京ドーム28,077個分)、人口14,273人(令和5年6月末)うち20%以上が農業に従事しており、総酪農家数659戸、牛飼育頭数119,125頭、生乳生産量(令和4年実績)502,638トンで生乳生産量全国一の酪農王国です。
• 所 在 地 :北海道野付郡別海町別海常盤町280番地
• 代 表 者 :町長 曽根興三
▷URL:https://betsukai.jp/
▷TEL:0153-75-2111
●学識アドバイザー
土壌に関する科学的な知見や循環型農法の構築に向け、北海道大学 信濃卓郎教授、カーボンファーミングを新しい社会システムとして組み込むためのオフセットクレジット造成に向けて一般社団法人Natural Capital 理事長馬奈木俊介氏の両氏が学識アドバイザーとして参画します。
●北海道農政部食の安全推進局食品政策課・経済部ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課(オブザーバー)
北海道農業の脱炭素化に向けて取組を進める農政部食の安全推進局食品政策課・経済部ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課がオブザーバー参加します。
• 所 在 地 :札幌市中央区北3条西6丁目
■ 生乳生産 日本一の別海町における土壌調査活動からスタート
別海町(町長 曽根興三) は生乳生産量(令和4年実績)502,638トンで生乳生産量全国一の酪農王国です。道東CF研究会長である中山も別海町に自身の農場を有しており、この日本の酪農の中心地にて町内各地点における土壌分析を行います。
分析結果は農林水産省が行っている『農地土壌炭素貯留等基礎調査』(※3)と比較を行うことや、牧草地の炭素吸収量の調査検討も行い、牧草地の土壌が持つ脱炭素のポテンシャルを見極めていきます。そして酪農業における土壌が持つ価値を再認識し、その価値をさらに高めていく日本版カーボンファーミングへと発展させていきます。
《 別海町長 曽根興三氏より 》
『既に酪農が脱炭素化に貢献していることを科学的に証明する必要があると考えている。そのため、草地が毎年どの程度CO2を貯蓄できるのか見える化に取り組むことを期待している。』
■ 今後の見通し『道東カーボンファーミングモデル』の発信と食のサステナビリティに向けて
2023年7月14日(金)には別海町にて関係各社・団体が集い、それぞれが抱く脱炭素へのビジョンと今後の活動の確認を行いました。初年度となる今年度はカーボンファーミングの展開に向けた準備期間と位置づけ、別海町内で土壌分析を行い現行酪農乳業の炭素貯蓄量を測定します。その結果を踏まえ、地域特性に則った脱炭素型酪農法を考察、2024年からはカーボンファーミングの試行を目指します。2026年末にはその知見とカーボンクレジット化により道東エリアそして道内全域、全国の酪農家が実践できる『道東カーボンファーミングモデル』として還元し、SDGsゴール年である2030年に向け日本発信の持続可能な酪農乳業として発信します。
(※1)大気中のCO2を土壌に取り込んで、農地の土壌の質を向上させ温室効果ガスの排出削減を目指す農法。2021年には欧州委員会がカーボンファーミングの普及のためのスキーム作成について、2018年から2年間実施した調査研究の成果を発表するなど、農林畜産業における温暖化ガス排出削減・吸収活動として注目されています。
参考資料:農林水産省資料 『Carbon Farmingに関する報告書 最終報告』(2023年3月)
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/attach/pdf/platform-172.pdf
(※2)北海道庁「北海道カーボンファーミング推進協議体」
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/clean/148792.html
お問合せ先 北海道庁農政部食の安全推進局食品政策課 TEL : 011-204-5431
(※3)「国連気候変動枠組条約」の締約国である我が国は、毎年、国全体の温室効果 ガスの吸収・排出量を条約事務局へ報告する義務があり、農水省は農地・草地土壌に おける温室効果ガスの吸収・排出量の報告に必要なデータを収集するための調査等を実施しています。
参考資料:農林水産省資料「農地土壌炭素貯留等基礎調査事業について」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/tuti_chyosa.html
《一般社団法人道東SDGs推進協議会長 会長プロフィール》
●中山 勝志(なかやま まさし)
有限会社中山農場代表取締役会長、一般社団法人道東SDGs推進協議会長。『人が幸せに、牛が幸せに、関わる人が幸せに』を社是とする中山農場は、1996年に地域に先駆け、家族経営から法人経営へ舵を切り、酪農乳業の内製化・組織化を行う。その後、牛舎へのロボティクスの導入、また糞尿によるバイオマス発電を行うなど先進的な取組を行う酪農家として注目を浴びています。
〒086-0654 北海道野付郡別海町中春別307番地の2
▷URL:https://www.nakayama-farm.com/
参考:明治ホールディングス株式会社 Meiji Dairy Advisory 中山農場紹介
▷URL:https://www.meiji.com/sustainability/dairy/meiji_dairy_advisory/case01/
《就任にあたってのコメント》
現在、日本の酪農業界はかつてないレベルで厳しい状況に置かれています。その中で我々、研究会メンバーは酪農乳業の脱炭素化の実現と同時に北海道から日本の食を守っていきたいと考えています。カーボンファーミングへの挑戦を社会から応援して頂き、生産者やメーカーそして消費者の皆様が参加出来るような活動を目指したいと思います。