2023年度から3年間のプロジェクト、審査結果が7月18日(火)に公表
キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下キユーピー)は、生物系特定産業技術研究支援センター(以下生研支援センター)が公募する、「令和5年度オープンイノベーション研究・実用化推進事業※1」に応募し、「こめ油成分をまるごと活用した自己乳化技術による加工米飯の価値向上」のテーマが採択※2されました。この事業は、産学官が連携して取り組む農林水産・食品分野での社会実装を目的とした、革新的な研究シーズを創出する基礎研究や、それらを社会実装するための実用化段階の研究開発を対象としています。キユーピーは6団体でコンソーシアムを結成※3し、こめ油成分の乳化油脂を用いた加工米飯の研究を進め、おいしさや日持ちの向上と健康課題を同時に解決するコンビニおにぎり、パックご飯等を想定した社会実装を目指します。
コメの消費を変える画期的な取り組み。ポイントは、でんぷんの老化を防ぎ、消化を穏やかにすること。“血糖値を急激に上昇させないおいしい白ごはん”を目指して
通常白米は、精米の工程で米ぬかを取り除きますが、この米ぬかから抽出・精製して得られるこめ油成分に着目し、これを独自の乳化技術で白米に戻すことで、おいしさ・日持ちの向上と健康課題の解決を目指すというのが、今回採択された研究の概要です。ここでポイントとなるのが、でんぷんの「レジスタントスターチ(RS)※4化」です。性質の違いにより5種類に分類されるRSのうち、本研究では、RS5(でんぷんと脂質の複合体)に着目することで、①でんぷんの老化を防いでおいしさ・日持ちを向上させ、②糖質を消化されにくい形に変えて血糖値の上昇を抑える、というメリットが期待できます。これがコンビニおにぎり、パックご飯等の加工米飯として社会実装されれば、“血糖値を急激に上昇させないおいしい白ごはん”の摂取が可能となり、糖質を単純に控えるのではない、コメの新しい消費の形を生み出す可能性を秘めています。
日本人のコメの消費量はピーク時の半分以下。本研究の社会実装で需要を創出
農林水産省「食料需給表」によると、日本人が一年間に消費するコメの量は、1962年の118.3kgをピークに下がり続け、2020年にはピーク時の半分以下の50.8㎏にまで落ち込んでいます。米農家の数も、1970年の約466万戸から、2020年には約70万戸と、50年間で約85%減となり、食料自給率の中で唯一100%に近いコメが、今後は確保できなくなる懸念もあります。今回採択された加工米飯に関する研究が社会実装されてコメの需要創出が促されれば、生産者も増え、消費量増加が期待できます。また、でんぷんの老化防止効果で賞味期間延長が可能となれば、廃棄ロスの削減にもつながります。キユーピーは、農林水産業・食品産業の発展と持続可能な社会の実現に向けて、コンソーシアム・協力機関とともに、本研究を意欲的に進めていきます。
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研究開発概要
1.研究期間:
2023(令和5)年度から2025(令和7)年度までの3年間
2.研究開発テーマと研究体制(研究体制は図を参照):
「こめ油成分をまるごと活用した自己乳化技術による加工米飯の価値向上」
1)植物レシチン素材とそれを用いた自己乳化製剤の開発
2)乳化製剤処理した加工米飯の食味保存性(老化防止効果等)評価
3)乳化製剤処理した加工米飯の健康機能性の検証
4)乳化製剤処理米飯粒の糖質消化性評価と影響因子研究
5)機能性成分の吸収性向上研究
※1 オープンイノベーション研究・実用化推進事業:国の重要政策の推進や現場課題の解決に資するイノベーションを創出し、社会実装を加速するための、提案公募型の研究開発事業。令和4年度までは、「イノベーション創出強化研究推進事業」の名称で公募。
※2 令和5年度「オープンイノベーション研究・実用化推進事業」新規採択課題の決定について:
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/press/159107.html
※3 コンソーシアム構成団体:キユーピー株式会社、学校法人香川栄養学園 女子栄養大学 栄養クリニック、国立大学法人宇都宮大学農学部、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)食品研究部門、テーブルマーク株式会社、キユーピー醸造株式会社
※4 レジスタントスターチ(RS):難消化性でんぷん