命名ルールはキャベツ=植物、ハクサイ=鳥、ダイコン=陸の動物
タキイ種苗株式会社には、来年の干支「うさぎ」を別名にもつ品種があります。略称“うさぎ”として、現在もパッケージに印刷されています。なぜ略称が必要だったのか、当時の時代背景や、受発注システムが影響していました。
タキイの野菜品種には、品種名とは別に“略称”がついているものがあります。略称の誕生に関し、「品種の増加は、品種名の類似や長すぎるなどの問題点も生じさせた。取り扱いに便利なように品名の他に略称が用いられた」「略称は、当時急ぎの場合の通信手段として利用されていた電報の電略がわりとして、注文や催促、照会などに活用された。」と社史(創業150年史「タネの歩み」・1990年発行)に記されています。
今年3月、「危篤、至急来られたし」といった緊急連絡用に短い文章を送れる定文電報を、2023年1月に廃止するというニュースがありました。かつてタキイでも、販売店などからの注文を電報で受けていた時代があり、正確に、素早く処理する手段として電報の電略(電報略号)がわりに“略称”を使用していました。食糧増産時代から、高度経済成長へと続く中で種子の品種数や注文が増加し、正確に素早く処理する手段として略称が考案され、昭和32(1957)年秋から使用してきました。
例外もありますが略称の付け方のルールは、キャベツ=植物、ハクサイ=鳥、ダイコン=陸の動物などとなっており、現在も販売されている種子袋にも「キャベツ『初秋』=すすき」「ハクサイ『冬峠』=さぎ」「ダイコン『耐病総太り』=さい」などが、現在も印字して販売しています。例えば、来年の干支“うさぎ”の略称をもつ品種は、ダイコン『早太り聖護院』※です。電報で発注する際、
「ハヤブトリショウゴイン」より「ウサギ」と打った方が早く、文字数や料金の軽減に役立ちます。
現在は、販売店などからの注文もFAXやインターネットが中心で、略称を使用することはほとんどありません。社内でも略称を使う機会は以前よりかなり少なくなっていますが、略称を使用することもあります。略称が考案された背景を知ると、当時の人々の知恵と工夫を感じます。12年に1度巡ってくる『うさぎ年』が、新しい知恵と工夫で、より豊かで健やかな年となることを祈念しています。
※『早太り聖護院』…昭和46(1971)年に新発表された早太りで良質の丸ダイコン。肉質は緻密で甘みがあり、おでんなど煮食用として最適で、浅漬用にも適する。現在でも、家庭菜園などを中心に人気の品種。