木曜日, 8月 7, 2025
ホーム調査レポート【岡山大学】オオムギのアルミニウム耐性を担うクエン酸輸送体の構造的基盤を解明

【岡山大学】オオムギのアルミニウム耐性を担うクエン酸輸送体の構造的基盤を解明

2025(令和7)年 8月 6日
国立大学法人岡山大学

https://www.okayama-u.ac.jp/

<発表のポイント>

  • オオムギの根からクエン酸を分泌し、酸性土壌でのアルミニウム毒性を緩和するクエン酸輸送体AACT1タンパク質について、これまで不明だった立体構造を解明しました。

  • この構造解析により、クエン酸を輸送する仕組みも明らかになりました。

  • 本成果は、AACT1タンパク質の働きを応用すれば、安定して収穫できる作物の開発に役立つことが期待されます。

◆概 要

 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院先鋭研究領域(異分野基礎科学研究所)の菅倫寛教授の研究グループは、同領域(資源植物科学研究所)の馬建鋒教授、三谷奈見季准教授、同領域(異分野基礎科学研究所)の篠田渉教授、浦野諒助教(特任)らと共同で、オオムギ由来のクエン酸輸送体AACT1タンパク質の立体構造を明らかにしました。この立体構造の解析から、AACT1がクエン酸を放出する仕組みの構造的基盤が解明されました。

 本研究成果は、2025年8月5日、米国の科学アカデミー発行の機関誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されました。

 酸性土壌では、アルミニウムが溶け出し、植物は生育不良に陥ります。しかし一部の植物は、この環境ストレスを緩和するように進化し、根からクエン酸を分泌する機能を獲得しています。オオムギは、イネや小麦と比べて酸性土壌での生育が難しい作物とされていますが、一部の品種では、AACT1を介して根からクエン酸を分泌することで酸性ストレスを緩和しています。

 本研究により、クエン酸を輸送するこのAACT1の巧妙な働きが明らかになりました。植物のアルミニウム耐性を担うタンパク質の立体構造を深く理解し、その機能を精密に制御できれば、酸性土壌でも健全に生育可能な作物の開発につながることが期待されます。

クエン酸輸送体タンパク質AACT1の立体構造とその中央部に見つかったくぼみ

◆菅倫寛教授からのひとこと

 このクエン酸輸送体 AACT1 は、馬教授のグループによって発見されたものであり、その構造研究は岡山大学大学院命自然科学研究科に在籍していたベトナム出身の留学生、チャン・グエン・タオ大学院生が、5年の歳月をかけた研究の末に成し遂げた成果です。この輸送体タンパク質のグループは、すでにいくつかの構造が明らかにされていましたが、クエン酸のように負電荷をもつ物質を輸送するタイプの立体構造は、長らく未解明のままでした。
 本研究は、彼女の粘り強い努力と、共同研究者の多大な支援のもとで実現された成果です。

◆論文情報
 論 文 名:”Structural insights into a citrate transporter that mediates aluminum tolerance in barley”
      「オオムギのアルミニウム耐性に関わるクエン酸輸送体の構造的知見」
 掲 載 紙:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
 著  者:Tran Nguyen Thao, Namiki Mitani-Ueno, Ryo Urano, Yasunori Saitoh, Peitong Wang, Naoki Yamaji, Jian-Ren Shen, Wataru Shinoda, Jian Feng Ma, and Michihiro Suga
 D O I:10.1073/pnas.2501933122
 U R L:https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2501933122

◆研究資金
 本研究は、日本学術振興会・科学研究費補助金「特別推進研究」(課題番号:JP16H06296)、「基盤研究S」(課題番号:JP21H05034)、「基盤研究B」(課題番号:JP23K27143)、JST・創発的研究支援事業JPMJFR230W、日本学術振興会・論博事業等の支援を受けて実施しました。

◆詳しい研究内容について
 オオムギのアルミニウム耐性を担うクエン酸輸送体の構造的基盤を解明

 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250805-1.pdf

◆参 考

・岡山大学異分野基礎科学研究所(RIIS)
 http://www.riis.okayama-u.ac.jp/

・岡山大学異分野基礎科学研究所(RIIS)菅倫寛研究室

 https://sites.google.com/view/sugalab/home

・岡山大学資源植物科学研究所(IPSR)
 https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学資源植物科学研究所植物ストレス学グループ
 http://www.rib.okayama-u.ac.jp/plant.stress/index-j.html

◆参考情報1

・【岡山大学】光合成を担う“ゆがんだイス”型の触媒が、水分子を取り込む瞬間をナノ秒レベルで捉えることに成功! ~人工光合成の実現へ大きな一歩~

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001990.000072793.html

・光合成で“ゆがんだイス”型の触媒が酸素分子を形成する仕組みを解明~人工光合成触媒の合理的設計の糸口に~

 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id671.html

・【岡山大学】イネの安定多収に欠かせないケイ酸チャネルの構造基盤を解明

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000333.000072793.html

◆参考情報2

・【岡山大学】「岡山大学最重点研究分野」を制定~地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学を実現するために~

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001601.000072793.html

・岡山大学高等先鋭研究院に先鋭研究群(研究特区)「植物・光エネルギー開発拠点」を認定~わが国屈指の国際競争力を有する研究拠点が研究の卓越性と地球と生態系の健康(Planetary Health)を実現へ

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002489.000072793.html

・【岡山大学】高等先鋭研究院 異分野基礎科学研究所の菅倫寛教授が光科学技術研究振興財団「晝馬輝夫 光科学賞」の受賞者に決定

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002932.000072793.html

・【岡山大学】高等先鋭研究院 異分野基礎科学研究所の菅倫寛教授がJST「2023年度創発的研究支援事業」に採択

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002331.000072793.html

・【岡山大学】岡山大学異分野基礎科学研究所の菅倫寛教授が国際光合成学会「The Robin Hill 賞」を受賞

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000842.000072793.html

岡山大学異分野基礎科学研究所(岡山大学津島キャンパス)

◆本件お問い合わせ先

 岡山大学異分野基礎科学研究所 教授 菅 倫寛(すが みちひろ)

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス
 TEL:086-251-7877

 https://sites.google.com/view/sugalab/home

 岡山大学資源植物科学研究所 教授 馬 建鋒(ま けんぼう)
 〒710-0046 岡山県倉敷市中央2-20-1
 TEL & FAX:086-434-1209
 http://www.rib.okayama-u.ac.jp/plant.stress/index-j.html

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>

 岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階

 TEL:086-251-8745、086-251-8746
 FAX:086-251-8748

 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp

     ※ ◎を@に置き換えて下さい

 https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>

 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい

 https://venture.okayama-u.ac.jp/

 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
 岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html

 岡山大学オリジナルグッズ Online Shop:https://okadaigoods.official.ec/
 岡山大学統合報告書2024:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002801.000072793.html

 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw

 岡山大学地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS):https://j-peaks.orsd.okayama-u.ac.jp/

 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年7月期共創活動パートナー募集中:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003222.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

  • 岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~

    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

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