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尿素肥料に尿素分解酵素(ウレアーゼ)阻害剤「Limus®」を使用することで、CO₂換算で46,000トン以上の排出量を削減
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排出削減量は国際的なカーボンアカウンティング基準に基づき、独立機関が検証
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初のパイロット試験の成功により、雲天化との継続的な排出削減モニタリングとグローバル展開の可能性が拓かれた
尿素肥料に尿素分解酵素(ウレアーゼ)阻害剤「Limus®」を使用することで、CO₂換算で46,000トン以上の排出量を削減
排出削減量は国際的なカーボンアカウンティング基準に基づき、独立機関が検証
初のパイロット試験の成功により、雲天化との継続的な排出削減モニタリングとグローバル展開の可能性が拓かれた
2023年、BASF(本社:ドイツ ルートヴィッヒスハーフェン)と中国の肥料メーカーである雲南雲天化股份有限公司 (以下:雲天化、本社:中国 雲南省昆明市)は、中国において、BASFのウレアーゼ阻害剤Limus®を含む雲天化の安定化尿素肥料の使用によるCO₂換算排出量(CO₂e)の削減を検証するためのパイロットプロジェクトを開始しました。
パイロットでは、Limus®処理肥料を使用した場合、未処理肥料と比較して約46,584トンのCO₂e排出量を削減できたことが確認されました。この推定値は、パイロット期間中における雲天化のLimus®安定化尿素の販売量に基づいています。この結果は、中国における気候変動に配慮した農業の取り組みに貢献するだけでなく、世界的な展開の可能性を示す成功事例となりました。

尿素肥料に含まれる窒素の約15%はアンモニア[1]として大気中に放出され、大気質や生物多様性に悪影響を及ぼします。また、窒素は一酸化二窒素として温室効果ガスとなり、大気中に放出されます。環境への悪影響だけでなく、作物が最も必要とする時期に利用可能な窒素が減少するため、農業者は経済的損失や収量・品質の低下といった影響も受けます。本プロジェクトにより、尿素肥料にLimus®ウレアーゼ阻害剤を施用することで尿素が安定化し、未処理の標準肥料に比べてアンモニアと一酸化二窒素の放出を抑えられることが実証されました。雲天化は気候変動に配慮した農業の取り組みの一環として、農業者、流通業者、小売業者向けに現地で実証試験を実施し、安定化尿素のこれらの利点を紹介しています。
本プロジェクトは、国際規格であるISO 14064に基づき、独立した監査機関により検証されています。温室効果ガスのインベントリ作成および報告にISO 14064規格を適用し、温室効果ガスの削減または除去を目的とするプロジェクトを掲載する公開データベース「GHG CleanProjects® Registry [2]」に登録されました。また、BASFはカーボンマネジメントとサステナビリティのリーディング企業であるFirst Climate社と連携し、中国における本パイロットプロジェクトの設計とモニタリングを行いました。
BASF窒素マネジメントビジネスリードであるマルクス・シュミットは、次のように述べています。
「雲天化と共に、排出削減を検証するこの気候変動に配慮した農業(クライメート・スマート・アグリカルチャー)の取り組みが実行可能であること、そして気候変動の中で農業が果たすべき重要な役割を証明しました。現在、第2回目のモニタリングが進行中であり、フードバリューチェーンのパートナーへの展開に向けた土台を作っています。」
雲南雲天化農資連鎖有限公司のゼネラルマネージャーであるチェン・ジン氏は、次のように述べています。
「Limus®は非常に革新的な製品であり、尿素の施用量を削減しつつ、肥料の効率と作物の収量を向上させ、環境への窒素損失を大幅に低減することが実証されています。これは、肥料業界、農業者、社会にとって三方良しのソリューションです。BASFとの気候変動に配慮した農業の取り組みを継続することで、農業の近代化と持続可能な農業に向けた革新的な解決策を追求するという当社の戦略目標の実現を後押ししています。」
2024年のカレンダーイヤーにおけるLimus®処理済み肥料によるCO₂eの削減を再度検証するため、BASFは、堅牢かつスケーラブルなモニタリング手法の構築などパイロットプロジェクトで得られた知見をもとに、雲天化と共に第2回目のモニタリングを実施しています。またBASFは、他国の肥料メーカーとの同様の取り組みの可能性も模索しています。この取り組みを通じて、農業バリューチェーンにおける上流の肥料生産者が、気候変動に配慮した農業の取り組みに参加し、安定化窒素肥料の使用による排出削減を検証・取得し、自らのカーボンフットプリントを削減できることを目指しています。
[1] Pan et al. 2016: Ammonia volatilization from synthetic fertilizers and its mitigation strategies: A global synthesis, Agriculture, Ecosystems and Environment 232, 283~289ページ
[2] GHG CleanProjects® Registry
https://www.csaregistries.ca/GHG_VR_Listing/CleanProjectDetail?ProjectId=1128
※この資料はBASF本社(ドイツ)が2025年6月3日に発表した英語のプレスリリースをBASFジャパンが日本語に翻訳・編集したものです。
※このプレスリリースの内容および解釈については英語のオリジナルが優先されます。
■BASFのアグロソリューション事業本部について
私たちのすべての行動の理由は、「農業が、好きだから」。農業は、急速に増加する人口に対応するため、健康的で手頃な価格の食料を安定的に供給するとともに、環境負荷を低減することが求められています。そのため私たちは提携パートナーや農業の専門家と協力し、あらゆるビジネス上の判断を持続可能性(サステナビリティ)を基準に行っています。2024年には9億1900万ユーロを強力な研究開発パイプラインに投資し、革新的なアイデアから実用的なソリューションを生み出しています。当社のソリューションは、さまざまな作物システム向けに設計されています。種子、作物の形質、化学農薬、デジタルツールとサステナビリティのアプローチを組み合わせ、農業者・生産者とバリューチェーンにおけるステークホルダーが最高の結果を出せるよう支援しています。研究所、生産現場、オフィス、製造拠点のチームと共に、農業の持続可能な未来を築くために全力を尽くしています。2024年の売上高は98億ユーロでした。アグロソリューション事業部についての詳細は https://www.agriculture.basf.com/jp または各種ソーシャルメディアをご覧ください。
■BASFについて
BASF(ビーエーエスエフ)は、ドイツ ルートヴィッヒスハーフェンに本社を置く総合化学会社です。私たちは、持続可能な将来のために化学でいい関係をつくることを企業目的とし、経済的な成功とともに環境保護と社会的責任を追及しています。また、お客様のグリーントランスフォーメーションを可能にする、選ばれる化学会社になるという意欲的な目標を掲げています。全世界で約 112,000 人の社員を有し、世界中のほぼすべての産業に関わるお客様に貢献しています。ポートフォリオは、コア事業の事業セグメント(ケミカル、マテリアル、インダストリアル・ソリューション、ニュートリション&ケア)、スタンドアローン事業の事業セグメント(サーフェステクノロジー、アグロソリューション)から成ります。2024 年の BASF の売上高は 653 億ユーロでした。BASF 株式はフランクフルト証券取引所(BAS)に上場しているほか、米国預託証券(BASFY)として取引されています。BASF の詳しい情報は https://www.basf.com/global/en.html をご覧ください。