りんご生産者186名が回答。生産量減少は4割が実感、6割が将来に不安
日本の農産物の生産から販売まで一気通貫で展開し、新たな産業構造を創出する株式会社日本農業(本社:東京都品川区、代表取締役CEO:内藤祥平、以下「日本農業」)は、青森県内のりんご生産者を対象に実施したりんご生産に関するアンケートをもとに調査・分析し、結果を公開いたしました。

■調査結果サマリ
・生産量は減少傾向。高齢者ほど実感強く
・将来の栽培面積は若年層が拡大志向、高齢層は縮小・離農へ
・栽培面積縮小の主因は「人手不足」
・生産コストの上昇を9割以上が実感
・6割超の生産者が将来に不安。若年層にも広がる
■調査の背景
農林水産省の試算*1では、2030年には2020年と比べて果樹の耕作面積と農業者は半減すると予測されています。青森県においてもりんごの栽培面積は、2023年から2024年の1年間で400ha(2.1%)減少*2するなど減少傾向が続いています。
日本農業は、「日本の農業で、世界を驚かす」をミッションに、生産から販売までを一気通貫で担い、産業の構造転換を目指しています。青森県弘前市に支店を構え、青森県内のりんご生産者の皆さまと契約を結び、青森県産りんごをアジア各国へ輸出および日本全国に販売しています。青森のりんご産業を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、現場の実情を正確に把握し、課題解決につながる取り組みが一層求められています。
そこで今回、日本農業では、青森県内のりんご生産者を対象に、近年の生産動向や経営課題、将来の展望などを把握するためのアンケート調査を実施しました。
*1:農林水産省「基本計画の策定に向けた検討の視点 我が国の食料供給(農地、人、技術)」(https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241106-3.pdf)
*2:農林水産省「令和6年果樹及び茶栽培面積(7月15日現在)」
■調査の結果
・過去数年で生産量減少を実感した生産者は4割。年齢とともに増す生産量減少の実感
ここ数年のりんごの生産量の変化について聞いたところ、「30%以上減った(9.1%)」「20%くらい減った(15.6%)」「10%くらい減った(15.6%)」と、40.3%の生産者が減少と回答しました。一方で、「増えた」と答えた生産者は32.3%と、生産量が減った生産者が上回っていることが明らかになりました。
年代別でみると、年代が上がるにつれて生産量の減少を実感しており、60歳以上の生産者の半数以上が減少と回答しました。高齢による作業負担や技術継承の難しさが伺える結果となりました。

・5年後の栽培面積は、3割が「増加予定」。60代以上は縮小・離農の傾向強まる
5年後の栽培面積に関する展望を聞いたところ、「栽培面積を増やすことを検討している(1~30%)」が29.0%、「大幅に面積を増やすことを検討している(30%以上)」は5.9%と、増加予定と回答した生産者は34.9%となりました。一方で、28.5%が縮小や離農を検討しており、経営の二極化が進んでいます。
年代別でみると、増加予定と回答したなかで20~30代の若年層が8割を超え、若年層ほど拡大意向が強い結果となりました。一方で、60歳以上では縮小や離農を検討している割合が高いことが明らかになりました。このことから、担い手の世代交代が今後のりんご産業の持続性や発展に大きな影響を与えると考えられます。


・栽培面積縮小の理由、8割が「人手不足」。労働力確保の困難が大きな影響を与える
栽培面積の縮小を検討している生産者にその理由を尋ねたところ、「労働力の確保が困難のため」で全体の80.0%を占めました。高齢化や人口減少の影響により、特に農繁期における人手確の確保が難しくなっている実態が伺えます。また、1割ほどの生産者は気候変動や将来の不確実性を理由に挙げており、安定した経営基盤の構築が今後の課題であることが示されました。

・生産者の9割以上が「コスト増」を実感。肥料・農薬費と人件費が経営を圧迫
ここ数年のりんごの生産コスト(肥料、農薬、人件費など)について尋ねたところ、95.7%の生産者が「コストが増加している」と回答しました。なかでも「特に肥料・農薬の負担増が一番大きい」とする回答が48.9%、「特に労働の負担増が一番大きい」が42.5%、「特に動力光熱費の負担増が一番大きい」が4.3%となりました。肥料や農薬の価格上昇が近年の生産コスト増加の主因とされる一方で、人件費の上昇や労働力確保の難しさも深刻な課題となっており、生産者は物価と人手の両面で大きな負担を抱えている実態が見受けられます。

・6割を超えるりんご生産者が中長期的な不安を抱える。世代問わず共通する将来への懸念
5~10年後のりんご産業について聞いたところ、「非常に不安を感じる(生産が続けられない可能性が高い)」が17.7%、「やや不安を感じる(現在の状況が維持できるか不透明)」は44.1%となり、6割を超える生産者が中長期的な不安を感じていることがわかりました。
年代別で見ると、30代などの比較的若い年齢層の生産者も、60歳以上の高年代層と同じ割合で不安を抱いており、世代を超えた構造的な懸念が存在していることが伺えます。


■調査概要
調査名 :りんご生産についてのアンケート調査
調査機関 :自社調査
調査方法 :インターネット調査および訪問調査
調査対象 :青森県内のりんご生産者
調査期間 :2025年4月18日~2025年4月28日
回答者数 :186名
回答者の年代:20代 4.8%、30代 14.5%、40代 31.2%、50代 36.3%、60代以上 23.2%

■株式会社日本農業 執行役員 流通事業本部 本部長 松本康平のコメント
青森県のりんご収穫量は、2024年度が37万500トン*3と2年連続で40万トンを下回りました。生産量の減少を日々感じるなかで、日本農業はその解決に向けて高密植栽培*4の研究・開発に取り組んでいます。成功だけではなく失敗も含めた経験を共有し、青森県内の高密植栽培の普及に寄与したいと考えています。
今回のアンケート調査を通じて、生産者の多くがりんご産業の将来に不安を抱えていることが明らかになりました。栽培面積の縮小を検討する生産者の8割が「労働力の確保が困難であること」を理由に挙げるなど、青森県のりんご産業が直面する構造的な課題があらためて浮き彫りになっています。
生産者が抱える不安の解消や、特に高齢層の多くが取り組む慣行栽培である丸葉栽培を守ることもとても重要だと考えます。生産者の作業負担の軽減となるよう、「ぶっこみ入庫」*5や集荷サービスに加えて、剪定や摘果、収穫などのサポート体制をさらに強化していきます。青森県の基幹産業であるりんご産業の維持・発展に貢献するべく、挑戦を続けてまいります。
*3:農林水産省「令和6年産りんごの結果樹面積、収穫量及び出荷量」(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/ringo/r6/index.html)
*4:世界的に主流となってきている収益性、効率化を求める栽培方法。日本で広く採用される栽培方法での平均収穫量は1反あたり約2トン、高密植栽培では3倍の1反あたり約6トンの収穫が可能。一本一本の樹を細く仕立て面積あたりの定植本数を増やし、また、樹を一直線に並べて植えることで、農作業の効率化に適している
*5:生産者での山選果をせずに入庫する日本農業のサービス
■株式会社日本農業について
企業名 :株式会社日本農業(英文表記:Nihon Agri, Inc.)
代表者 :代表取締役CEO 内藤祥平
所在地 :東京都品川区西五反田1丁目13-7 マルキビル101
設立 :2016年11月
事業内容:農産物の生産・加工および輸出・販売、農業経営コンサルティング等
公式note:https://note.com/nihon_agri