大阪府北部地震の教訓を生かしながら安全点検表を用いて敷地内を点検

高槻市教育委員会は、平成30年6月18日に発生した大阪府北部地震を契機に、セーフティプロモーションスクール(SPS)の認証取得を始めとした、学校安全の取り組みを推進してきました。震災発災から7年を前にした令和7年6月4日(水曜日)、学校安全の取り組みの一つとして、市立阿武野小学校では、教職員36人と樹木医2人による学校施設・設備の安全点検が実施されました。
高槻市では例年6月を「子どもの安全確保推進月間」と定め、児童や生徒、園児の安全指導や学校施設・設備の安全点検等を実施するとともに、防犯や不審者対応等を含めた安全対策の徹底と点検を行い、安全意識の高揚に努めています。
学校施設・設備の安全点検とは、児童等の学習や活動の場において、事故発生の要因となる危険箇所がないかを教職員の目線で点検するもの。普段児童等が授業中に過ごす普通教室や理科室などの特別教室、体育館、プール、休み時間中に児童等が遊ぶ遊具、備品を保管する倉庫、普段立ち入ることが少ない校舎の屋上など様々な箇所を「天井や壁にひび割れなどの破損がないか」「机や授業で使う教材など子どもたちが日常的に使用する備品に異状がないか」「強い揺れが発生した際に落下の可能性がある箇所に物が配置されていないか」など地震発生時も想定した約260点の点検項目に沿って、視診・触診等を通じたチェックを行います。また、点検結果は校内で共有し教育委員会等への改善要望につなげます。
今回の安全点検では、上記のような教職員による点検に加え、職員の目線からでは異常の発見が困難な学校樹木を対象に、樹木医による専門的な点検を実施。学校樹木の点検については、毎月、「学校における安全点検要領」に基づいて、学校の教職員が点検を行っていますが、本市の全ての小中学校は設置されてから数十年以上が経過し、樹木についても樹齢を重ねていることから、自然災害時などに倒木する危険性がないかなどを専門的な視点で確認するため、令和7年度は専門家(樹木医)による全小中学校に植えられた樹木を対象にした危険木診断を実施することになりました。
この日、市立阿武野小学校で実施された安全点検には、教職員36人と樹木医2人が参加。教職員は、体育館、屋上など、担当場所に分かれて「床板に異常や破損等は見当たらないか」「高所の設置機器が落ちそうになっていたり取り付け金具の変形や腐食等の異常は見当たらないか」など点検表に記載された項目に基づき、目視や触診等を実施。また、樹木医は、木槌で樹木を叩き、反響音で樹木内の空洞を確認したり、土中の見えない部分に樹木の腐りがないかを鋼棒を使って確認したりするなど樹木の専門家としての知見を生かし、樹木の触診や目視等による点検を実施しました。今後、点検によって異常の感じられた箇所は校内で共有し、教育委員会に状況の確認や修繕依頼を行い、樹木医によって危険と診断された樹木は、診断結果に応じて伐採や枯れ枝の剪定等の対応を行う予定です。
学校安全に係る業務を所管する学校安全課課長は「本市は、大阪府北部地震の発災以来、SPSの認証取得、実践的な避難訓練の実施など様々な学校安全の取り組みを推進してきた。「安全で安心な学校づくり」を推進するためには、専門的な知見が必要な内容については、専門家や業者等に委ねることも必要であるが、その一方、日常から学校施設を使用している教職員の皆さんの視点も重要と考えている。今後も学校や専門機関と連携を図りながら、学校安全の取り組みを推進していきたい」と話していました。
【参考事項】
セーフティプロモーションスクール(SPS)
高槻市では、大阪府北部地震以降、「全ての児童生徒等が、自ら適切に判断し、主体的に行動できるよう、安全に関する資質・能力を身に付けること」を学校安全のめざすべき姿の一つとして設定し、その実現に向け、大阪教育大学学校安全推進センターの提唱する学校安全の3領域「生活安全」「交通安全」「災害安全」を網羅し、年間計画の策定や活動の実践、評価、課題への対応・改善等を行う「セーフティプロモーションスクール(SPS)」の認証取得を進めてきた。寿栄小学校が令和3年3月に、第三中学校・芝生小学校・丸橋小学校が令和5年2月にSPSの認証を受け、第三中学校区の全ての小中学校がSPSの認証校となった。現在は、これまでにSPSの認証取得に向け蓄積してきた第三中学校区の取組成果を他校に普及させ、全市的な学校安全の質の向上と一層の推進を図っていくための取り組みを進めている。
子どもの安全確保推進月間
平成13年6月8日の大阪教育大学附属池田小学校への不審者侵入事件を受け、大阪府が6月を「子どもの安全確保推進月間」としたことを受け、高槻市でも平成14年度からは毎年6月を「子どもの安全確保推進月間」として位置付けた。それ以降、安全に関する取組を通して安全意識の高揚を図るため、取組を推進している。
学校安全の手引
高槻市の地域特性や実情に応じて、教職員が学校で学校安全に関する主要な活動である「安全教育」、「安全管理」、「組織活動」の取組を実施するにあたり、参考とするための手引書。令和7年3月に、国の「第3次学校安全の推進に関する計画」及びSPS認証校の取組成果等を踏まえたものに全面改定した。
今回の安全点検で使用する安全点検表は「学校安全の手引」の一部であり、全面改定を行った際、国の「学校における安全点検要領」において示された安全点検表をベースとしながら、見直しを行ったもの。
学校における安全点検要領(文部科学省作成)
文部科学省は、「学校安全の推進に関する有識者会議」において、消費者安全調査委員会からの意見具申(令和5年3月3日付)及び「第3次学校安全の推進に関する計画」(令和4年3月25日閣議決定)を踏まえ、学校の安全点検の在り方について検討を行い、学校現場等において質の高い実効性のある安全点検を実施するための参考となるよう、「学校における安全点検要領」(令和6年3月)を作成し、ウェブサイト上で公表している。
安全要領は、教職員の負担軽減も考慮しながら、学校における施設・設備の定期点検及び日常の安全点検に関する標準的な手法・頻度・観点や、専門的な知見を取り入れた外部人材等の活用の考え方のほか、安全点検表サンプルや点検箇所ごとの解説動画、取組事例等が掲載されている。