チョウザメは外観ではオスとメスの差がなく、お腹を割いて雌雄判定を行うのが業界の常識でしたが、株式会社プラントフォームがこの度、外観の差の発見と新たな雌雄判定法の開発に成功しました。

持続可能な新しい食料生産システムの開発と社会実装を目指す株式会社プラントフォーム(本社:新潟県長岡市、代表取締役CEO:山本 祐二)は、この度チョウザメの鱗に形態的な雌雄差があることを明らかにし、この特徴を活用した新たな雌雄判定法を開発しました。開発した雌雄判定方法の詳細は、本年3月26日(水)~3月29日(土)に開催される「令和7年度日本水産学会春季大会」において発表を行う予定です。
■研究の背景
当社は、水産養殖と水耕栽培を融合させたアクアポニックス技術(※1)を活用し、チョウザメの養殖と、その排泄物を肥料とする有機水耕栽培に取り組んでいます。チョウザメの魚卵は高級食材「キャビア」として知られており、養殖において雌雄の判別は極めて重要です。しかし、チョウザメは外見上の雌雄差が乏しく、従来は「開腹法」と呼ばれる腹部切開による生殖腺の目視確認によって判別が行われてきました。この方法は、チョウザメに大きな負担を与えるだけでなく、作業者にとっても肉体的・精神的負担が大きいため、開腹法に代わる新たな雌雄判別技術の開発が求められています。
■研究の経緯
当社は国内事業者として先駆けてチョウザメの性染色体をターゲットとしたDNA検査法(※2)を導入し、低侵襲な雌雄判別技術を活用したアニマルウェルフェアに配慮したチョウザメ養殖を推進してきました。チョウザメはその名のとおり、蝶のような形をした独特の鱗を持つことが特徴です。当社では、DNA検査法の活用によって大量の雌雄判別が可能となったことで、鱗の形態に雌雄差がある可能性を見出し、これに基づく新たな雌雄判別技術の検証を行いました。
■研究の内容
当社のアクアポニックスプラントで養殖しているDNA検査法により雌雄を判別済みのコチョウザメ成魚を対象に、背中の硬鱗を撮影しました。撮影した画像を解析し、鱗の長さや幅などのデータを取得後、得られた測定値を基に複数の指標を作成し、雌雄差を解析しました。その結果、いくつかの指標において統計的に有意な雌雄差が認められました(図1)。さらに、開発した指標を基に目視判別の可能性を検討したところ、複数の指標を組み合わせてスコア化することで、雌雄を明確に区別できることが確認されました。
■今後の展望
本研究により、従来は困難とされていた外観による雌雄判別が可能であることが明らかになりました。この発見は、開腹法に代わる、チョウザメにも作業者にも優しい、非侵襲かつ高効率な雌雄判別方法を提供するものであり、アニマルウェルフェアに配慮したチョウザメ養殖の普及に繋がります。今後は、さらなる判別精度の向上と効率化を目指し、AIを活用した画像診断技術の開発を視野に入れ、研究を進めてまいります。
株式会社プラントフォームは、安全・安心で持続可能な農水産物の新しい生産モデルの実現を目指して、今後も更なる研究開発を続けてまいります。
■学会発表情報
学会名:令和7年度日本水産学会春季大会
発表日時:2025年3月27日(木)13:15〜14:15
演題:チョウザメの新規雌雄判定方法の開発
演者:榎康明、加野北斗(株式会社プラントフォーム)

■プラントフォームについて
国内で初めて植物工場型のアクアポニックスの開発と運営に成功。創業当初からアクアポニックスの社会実装を目指し、大規模プラントに特化して事業展開を行っており、現在当社が手掛けるプラントは全国で 6ヶ所まで拡大している。
当社は安心安全な持続可能な新しい食料生産システムを開発、拡大させることで「いつでも、誰でも、手に届く価格で有機野菜を選べる世界の実現」を目指しています。
本社:新潟県長岡市上前島 1 丁目 1863
設立:2018 年 7 月 24 日
代表者:山本祐二

【事業内容】
・植物工場型アクアポニックスプラントの企画・設計・施工
・アクアポニックスプラントの運営サポートサービス(営農指導、販路支援、資材飼料等の販売)
・アクアポニックス野菜の生産と販売(ブランド名:FISH VEGGIES~お魚が育てたお野菜~)
・閉鎖循環式によるキャビアの製造と販売(長岡キャビア、吟醸キャビア、ワインフレーバーキャビア)
・レストラン事業(発酵熟成イタリアン・NAGAOKA SASATEI)
URL:https://www.plantform.co.jp/
■本件への問い合わせ先
株式会社プラントフォーム 技術本部
info@plantform.co.jp
0258-86-8460
※1:榎ら,化学と生物,61,530-8,2023.
※2:Kinami & Ineno, Aquaculture, 596, 741808, 2025.