近年、分子生物学的手法を駆使した腸内細菌叢解析の発達により、腸内細菌叢の全容が明らかにされつつあり、様々な疾病との関わりも示唆されております。しかし、従来の腸内細菌叢の研究においては、人種や食生活など、背景にある環境因子の影響を大きく受けることや、測定においても前処理技術などの違いにより結果の解釈が分かれることが課題となっておりました。
本研究では、全く同じ手法で腸内細菌叢を解析した16の臨床研究で得られた、合計1,803名分の日本人の健常者と疾病有病者の腸内細菌叢データの統合解析を行うことで、腸内環境評価システムを開発いたしました。
今後はプリメディカが提供を開始する検査サービスを通して、引き続き研究を⾏いながら更なるデータを収集し、腸内細菌叢改善効果のある食品機能性等の研究における標準的な評価指標として、幅広く⽤いられることを目指します。
【研究成果を社会実装したサービス「Flora Scan」】
Flora Scan(フローラスキャン)は本研究によって得られた国内有数規模の日本人腸内細菌叢データベースを用いた検査サービスです。背景情報まで含んだ大規模データベースを用いることにより、自分自身の腸内環境を把握できることはもちろん、腸内環境に関わる様々な研究において、比較評価するための指標として活用することが可能です。
本検査はプリメディカにより、製薬/食品メーカーをはじめとする企業様や、健康診断/人間ドックを実施している医療機関様向けに、研究受託事業および検査サービス事業として提供を開始いたします。
【「Flora Scan(フローラスキャン)」3つの特徴】
特徴①:日本人特有の新たなエンテロタイプの定義
腸内細菌叢の特徴を表す指標である「エンテロタイプ」は、先行する欧米での研究成果により、大きく4つのタイプに分類できるとされています。これらは摂取する炭⽔化物・タンパク質・脂肪のバランスといった⾷⽣活の傾向に影響されると考えられ、欧米の食生活とは異なる日本人に対して、欧米と同様の指標で腸内細菌叢を特徴付けることの妥当性に関しては様々な意見がありました。
本研究ではAI(人工知能)を用いて、⽇本⼈に最適なエンテロタイプの解析に着⼿し、38細菌属の存在比率に基づき5つのタイプに定義できることを明らかにしました。本検査では日本人の腸内細菌叢を特徴付けるエンテロタイプを5つのタイプに再定義し、評価しています。
特徴②:疾患との関連性を評価
本研究における統合解析により、腸内細菌叢と疾患との関連性が明らかとなりました。プリメディカが提供する検査サービスでは、上述した日本人の腸内細菌叢を特徴付けるエンテロタイプと各疾患(炎症性腸疾患:IBD、機能性胃腸症、肝疾患、内分泌疾患、⼼疾患、精神疾患、⾼⾎圧、⾼脂⾎症、⾼尿酸⾎症、糖尿病)との関連性を評価*1しており、この評価手法は三者共同での特許出願を行いました。
本手法を用いた評価において、例えばIBDのオッズ比*2が、最も健康だと評価されるタイプの約27倍というタイプも存在することが明らかになっております。
*1特願2021-106050、発明の名称「疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法」
*2オッズ比とは、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す際の指標です
特徴③:独自の測定/解析ノウハウ
本検査は摂南大学農学部 井上亮教授が考案した腸内細菌叢測定ノウハウを移転した、摂南大学発ベンチャーである株式会社フローラディスカバリーにて測定を行います。井上教授が保有する独自の解析前処理工程および解析プログラムを活用することで、検査時間の短縮および腸内細菌叢の測定におけるデファクトスタンダードの確立を目指します。
【京都府立医科大学】
京都府立医科大学は、明治 5 年(1872 年)に粟田口の青蓮院境内に設立された療病院をルーツとし、令和 4 年(2022 年)に創立 150 周年を迎えます。医学および看護学に関する知識、技能の教育とともに、研究および診療という基本を踏まえつつ、「世界トップレベルの医学を地域へ」という理念のもと、高度な教育、研究成果および医療を社会に還元しています。
https://www.kpu-m.ac.jp/
【摂南大学】
文・理あわせて 8 学部 17 学科の総合大学の強みを生かした幅広い教育・研究活動を展開 しています。2022 年 4 月には国際学部を開設、経営学部を改編し、2023 年4 月には現代社会学部を設置構想中です。
https://www.setsunan.ac.jp/
【株式会社プリメディカ】
重大疾患の発症リスクを早期に判定する検査の研究開発/マーケティング/販売など予防医療に特化した事業を展開しています。脳梗塞・心筋梗塞の発症リスク検査「LOX-index®」をはじめとする疾患リスク検査サービスを全国2,800施設以上の医療機関を通じて提供しております。
https://www.premedica.co.jp/
■本件に関するお問い合わせ先
京都府立医科大学
企画広報課 土屋
Tel:075-251-5804 Email:kouhou@koto.kpu-m.ac.jp
学校法人常翔学園
広報室(摂南大学担当) 坂上、大野
Tel:072-800-5371 Email:sakagami.kyoko@josho.ac.jp
株式会社プリメディカ
事業企画部 小川
Tel:03-5776-1105 Email:mar@premedica.co.jp