20世帯40人の知社集落で10年以上耕作放棄された棚田を再生。村産間伐材で建築した木造鶏舎で鶏640羽を飼育開始。3年以内に3000羽に拡大予定。資源循環型の小規模平飼い養鶏モデルの他地域展開を目指す
岡山県・西粟倉村を拠点に活動する合同会社セリフは、2024年11月8日に400㎡弱の木造鶏舎を建築し、後藤もみじ640羽による平飼い養鶏事業をスタートしました。2024年12月頃から有精卵を産み始め、2025年1月からの全国販売を開始します。
「もったいない」から「おいしい」を生み出す小規模平飼い養鶏モデル
わたしたちは鶏が介在することで未利用資源が循環する地域社会をつくりたいと考えています。調理で発生する野菜くず。春夏の草刈りで切り捨てられた雑草。出荷できなかった規格外の米や野菜。コイン精米機に溜まった米糠。これらはすべて鶏の餌になります。ごみとして捨てていたものが鶏の餌となり、餌を食べた鶏が味わい深いたまごを産む。鶏糞は米や野菜を生産する田畑の肥やしとなる。平飼い養鶏を起点に地域の未利用資源が循環する農業を実践します。
資源循環型の平飼い養鶏で実現すること
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生産性の低い山田・棚田等の耕作放棄地の再生
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集約化がしにくい中山間地での稼げる農業モデルの確立
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地域の未利用資源を飼料化し、ごみを減らす農業の実践
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青草の飼料化による草刈りのビジネス化
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資源循環型の小規模平飼い養鶏の他地域展開
季節で風味が変わる平飼い有精卵
生産するたまごは有精卵です。たまごを産まない雄も飼育することで自然交配がおこるためです。味はあっさりしていますがゆたかな香りとやさしいコクがつまっています。たまごの色は鶏が食べたもので決まります。米や緑餌をたくさん与えるので黄身の色はオレンジ色ではなくレモンイエロー色。卵の色調整のためだけに余計なものは食べさせません。季節や旬によって飼料の内容や割合がかわるのでたまごの風味もかわります。
鶏本来の生態に寄り添う薄飼い
日光を浴びる、走り回る、砂浴びをする、とまり木で眠る。鶏本来の生態に寄り添える低密度の平飼いに取り組んでいます。1㎡あたり2羽を基準としており、一般的なケージ飼育の5分の1以下の密度です。1群を200羽程度に抑えることで1羽1羽の鶏の健康状態を把握できるように努めています。また鶏舎内の敷料として籾殻と木屑をたっぷりと敷き詰め、糞が乾き匂いを抑えるようにしています。いずれも農家さんや材木屋さんからいただく地域の未利用資源です。糞と敷料は堆肥化し田畑に利用します。
100%国産の自家配合発酵飼料
輸入穀物に依存する市販の配合飼料はあたえず、自家配合の発酵飼料を鶏にあたえています。地元産の米や麦を中心に、米糠、生おから等を配合しています。飼料を発酵させることで鶏の体内環境を整え、消化吸収を良くします。自家配合の発酵飼料に加えて緑餌(天然の青草)をあたえています。緑餌にはビタミンや食物繊維が豊富に含まれ、鶏の血液を弱アルカリ性に保つ効果があります。購入する原材料も含めて100%国産です。たまごを購入してくれるお客さまに「(真の生産者である)鶏が何を食べているか」をきちんと説明できる生産者でありたいと考えています。
村産間伐材による木造鶏舎
広々とした400㎡弱の木造鶏舎は西粟倉村の間伐材を活用して建築しました。土木業者、素材生産業者、製材業者、大工…とすべてが村内事業者です。チーム西粟倉による木造鶏舎です。あえて構造材に必要以上の品質は求めず、規格流通する木材のモジュール(12cm角・天然乾燥ヒノキ柱等)や汎用的な建築資材を採用しています。他地域でもローコストかつ短納期で建築しやすくするための工夫です。
原体験はひよこ2羽ではじめた家庭養鶏
事業の原体験は家庭養鶏です。2020年に代表(羽田)が自宅で鶏の飼育を始めました。ひよこ2羽を友人に譲っていただいたことがきっかけです。村に移住してから趣味として続けていた狩猟や畑の延長で食材自給の手段として鶏を飼い始めました。半家畜半ペットとして4年間で岡崎おうはん・名古屋コーチン・烏骨鶏・アイガモ…と40羽以上を飼育してきました。有精卵を孵化させ、ひよこを育て、たまごを収穫し、たまごを産まなくなったメスや肉が付いたオスは屠殺して肉を食べる…というサイクルを回しています。スーパーマーケットで卵を買うことは一切なくなりました。我が家の鶏が産む卵がいちばん美味しいからです。そして、鶏を飼い始めたことで我が家では生ゴミがほとんど発生しなくなりました。野菜の皮や魚の内臓も鶏にとってはごちそうです。草刈りで発生した青草もサラダのように食べてくれます。近所の農家さんが「くず米をやるから鶏の餌にしたらええよ」とおすそ分けしてくれるようにもなりました。人間が食べない生ごみや未利用資源を食べることで鶏は美味しいたまごを産んでくれるのだと感動しました。
今後の計画
2024年11月に鶏舎1棟640羽飼育で事業をスタートしました。2025年中に同区画で鶏舎2棟を建築し1400羽の飼育体制を構築します。2028年までに鶏舎6棟3000羽飼育の事業拡大を予定しています。最小クラスの自治体規模である人口1300人の西粟倉村での事例を皮切りに他地域展開に取り組み、地域の未利用資源を飼料化する資源循環型の小規模平飼い養鶏モデルの普及を目指します。地域にひとつ養鶏場があることで未利用資源が循環しごみが減る社会を目指しています。
岡山県・西粟倉村
わたしたちの拠点は岡山県北・西粟倉村(にしあわくらそん)という1300人のむらです。村内にコンビニはなく、信号は2基のみの典型的な中山間地です。95%が森林に覆われており林業が盛んな地域です。澄んだ空気、あたたかい木漏れ日、清らかな源流、しんしんと積もる雪。里山を巡る四季がニワトリを育みます。
たまごの購入方法
2024年12月から鶏がたまごを産み始め、品質や規格を調整したのち2025年1月から全国販売予定です。まずは日産500個程度を予定しています。
一般のお客さまが購入できるECサイトや店舗
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西粟倉村内の道の駅やショップで販売予定
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兄弟会社・株式会社点々のブランドサイトおよびポップアップストア(直販店)で販売予定
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西粟倉村のふるさと納税の返礼品として登録予定
仕入れを検討していただける飲食店やホテル、食料品店等のプロユーザーさま
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セリフ社のコーポレートサイトにお問い合わせください
Instagramで情報更新しているのでお気軽にフォローしてください。> egg.serif.ltd
飼料化できる未利用資源を探しています
わたしたちは岡山県北・西粟倉村を拠点に活動しています。周辺地域の農家や事業者で鶏の飼料に活用できる未利用資源をお持ちの場合はお気軽にお声がけください。「もったいない」から「おいしい」を生み出す社会実験に力を貸してください。量や品質にもよりますが、未利用資源は購入させていただくか、たまごでお返しさせてください。
飼料化できる未利用資源の例
くず米・古米・米糠(米農家)、野菜くず(野菜農家)、おから(豆腐屋)、酒粕(酒蔵)、ビール粕(ビール醸造所)、醤油粕(醤油蔵元)、海苔・魚粉(水産加工業者)等
合同会社セリフ
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代 表 羽田 知弘
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住 所 〒707-0506 岡山県英田郡西粟倉村知社258番地1
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設 立 2022年8月9日(晴天)
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資本金 300万円
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連絡先 hello[at]serif.ltd
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事 業 地域資源の編集
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従業員 3名
沿革
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2024年 西粟倉村初の認定新規就農者に選ばれ平飼い養鶏を開始
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2022年 合同会社セリフを設立
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2019年 羽田知弘が個人事業主として事業開始
代表プロフィール
まちづくり会社や木材商社を経て、㈱西粟倉・森の学校(現:㈱エーゼログループ)に参画。事業部長としてマーケティング・セールス、集客施設の立ち上げ・運営、製品開発、人材採用育成等の業務に携わる。2022年に合同会社セリフを創業。㈱点々の取締役COOや㈱トビムシのコンサルタントとしても活動する。1989年生まれ愛知県津島市出身。三重大学卒業。岡山県北・西粟倉村在住。くくり罠の猟師。