金曜日, 11月 22, 2024
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内湾・沿岸域の海況を高度に再現する技術を初めて活用した赤潮予測アプリの実証を伊万里湾にて開始

~赤潮挙動のデジタルツインを開発し、養殖業における赤潮被害の軽減を目指す~

        【双日ツナファーム鷹島にてアプリを利用し、赤潮予測を確認している様子】

            【アプリ内の地図に表示されている赤潮の発生・挙動予想】

 赤潮は海中に生息する植物プランクトンが、海色が変化するほど異常に増殖する現象です。特に毒素を産生する能力を持った藻であるカレニア ミキモトイという種が増殖すると養殖魚が呼吸困難に陥り死んでしまうことから、水産業に大きな被害をもたらしています。被害は近年深刻になっており、養殖業の生産量第2位の長崎県では、2023年に13億円という甚大な被害が発生しています。2023年9月には長崎県知事が国に対して要望書を提出しており、被害軽減に向けた対策が求められています。

 赤潮予測アプリは、九州大学大学院総合理工学研究院の山口創一助教が開発したシミュレーションモデルである、UCHI(Unstructured-mesh Coastal model with High-resolution Information)がベースです。複雑な陸・海底地形、淡水流入・気象変動の影響を強く受ける内湾・沿岸域環境を、デジタルツイン(※1)として仮想空間上に高解像度・高精度に再現するものです。陸域、外海、気象に関する各種データと地元自治体や養殖業関係者が定期的に採取した海水の分析データを組み合わせることで、従来、発生状況の現状把握で留まっていたカレニア ミキモトイ赤潮の発生・挙動予測を1週間先まで可能とします。

 双日は、2008年に双日ツナファーム鷹島を設立し、伊万里湾口の鷹島(長崎県松浦市鷹島町)で約4万尾の本マグロを肥育しています。2023年度からは生け簀のデジタルツインを構築し、目視でカウントできないマグロの尾数を推定する方法を研究しており、2024年度には給餌量や水温、塩分などのデータ収集と分析を進めるなど、スマート水産業の取り組みを推進しています。近年、双日ツナファーム鷹島では赤潮により数百尾を失う被害も発生していることから、デジタル技術を用いた被害軽減に取り組むこととし、赤潮の移動経路の予測を地図上で表示するアプリケーションを開発しました。開発の初期段階から養殖業関係者向けの説明会を複数回開催し、ユーザー視点の意見を反映し、水深に応じた赤潮の移動を追加機能として実装するといった改良を重ねてきました。

 赤潮の挙動予測およびアプリケ―ションの実証フィールドは九州北部に位置する伊万里湾で、2024年7月から地元の漁業や養殖関係者60名に対し、アプリケーションによる赤潮予測の情報配信を無償で開始しました。ユーザーは情報をもとに、自身の養殖場や漁場への赤潮の到来の有無や到来する場合はその時期を事前に把握することが可能となり、餌止めや防除剤散布(※2)などの対策を実施することができます。事前に対策をとることで、赤潮と養殖魚の接触や要因となるプランクトンの増殖を抑制し、養殖業への被害軽減に繋がることが期待されます。今後は、本実証による効果の検証を行うとともに、現場の声をもとにカレニア ミキモトイ以外の有害プランクトンへの対応や、より便利な機能をアプリケーションに追加することも検討します。

 九州大学と双日は、UCHIの社会実装を通じ、漁業・養殖業における赤潮被害の軽減に貢献していきます。

(※1) デジタルツイン

現実世界から集めたデータをもとに仮想空間上に双子のようなデジタル空間を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術。仮想空間を用いることで、何度もシミュレーションすることができるようになる。

(※2) 防除剤散布

海面に散布することで、短時間のうちに赤潮プランクトンの細胞を破壊・凝集する性質をもつ。赤潮の発生が確認され細胞の増殖を止めるタイミングや、生け簀への流入を防ぐ際などに用いられ、到来の適切なタイミングに合わせて散布することで効果を発揮する。

                  【双日ツナファームの生簀の様子】

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