家庭向け切り花生産と収益を両立、無花粉トルコギキョウ「ソロⓇ PF」活用
サカタのタネ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:坂田宏)と株式会社大田花き(本社:東京都大田区、代表執行役社長:磯村信夫)は、福島県、長野県にて共同でEC・サブスクリプション(以下サブスク)向けのトルコギキョウの商品仕様開発を行いました。7月から本格的に切り花の出荷が始まります。生産者の収益を確保できる効率的な生産・出荷が可能な本取り組みを皮切りに、将来的にはホームユース向け切り花の小売価格が下がる可能性にも期待しています。
花のEC・サブスク市場(一部鉢物を含む。切り花が大半を占める)は、2020年と2022年比で約3.5倍と急成長し、2023年には300億円の市場規模になると予想されます(大田花き推計)。従来切り花は高単価が期待されるブライダルなど業務需要向け規格で生産されることが多く、特に冠婚葬祭需要の高いトルコギキョウは高価格帯で装花に適した長い丈で出荷されます。一方、サブスクのように消費者が家庭で楽しむ場合は、短い丈でかつ手ごろな価格帯の規格が求められています。今回の規格では、通常は1株から1本収穫するのに対し、1株から複数本収穫するため1本当たりの丈は短く単価を下げた一方、栽培、輸送コストなどを含めると生産者の収益増につながります。サブスク向けはあらかじめ必要数が決まっているため生産計画が立てやすく、生産者の経営安定にもつながります。また、今回の規格では従来規格より短い丈で生産するため、仕入れた切り花を切って調整していたサブスク業者の手間やごみの削減にもつながります。
本規格では、(1)無花粉のため日持ちがよく、輸送性に優れる、(2)仕立て方の工夫で1株当たり多くの本数が収穫でき、低単価でも収益を見込める、などといった特徴から、当社のトルコギキョウ「ソロ PF」シリーズが使用されています。
「約10年前から始まった花のサブスクサービスはコロナ禍を経てさらに発展しました。従来花を買っていなかった層へのアプローチが可能となり、アフターコロナの今もその勢いは堅調です。サブスク向けの規格、栽培では買い手を明確にし需要に応じた生産・流通を行うことができ、生産現場、流通における多くの“むだ”の削減につながります。生産者が安心して生産を営める持続可能な環境を整えることができると同時に、切り花小売価格も抑えられるため、より一層花が身近に楽しめるものとなりこれまで以上に花の消費拡大へつながるものと確信しています」(大田花き営業開発室長・黒田高碩)
「トルコギキョウのリーディングカンパニーである当社だからこそ世界初の無花粉トルコギキョウ『ソロ PF』を開発できました。これからも品種開発のプロフェッショナルとして、生産、流通、消費者の課題を解決することが使命であると確信しています」(サカタのタネ執行役員 花統括部長・吉田潤平)
■生産、流通、消費 それぞれのメリットにつながるEC・サブスク向け規格開発
従来トルコギキョウ産地では丈70cm程度を目指して生産、出荷しています。イベントなど装花に適したサイズである一方、限られたスペースで楽しむ家庭用には短いサイズ(約30~60cm)が必要とされてきました。
本規格では1株から複数本収穫することで、短い切り花を通常よりたくさん生産できます。また、トルコギキョウ栽培で手間となる芽かき(不要な側枝を取る作業)をしないため、作業労力を大幅に低減できます。出荷する際、従来の規格では20~40本/1箱でしたが、今回の規格で出荷すると300~400本/1箱となり、物流効率も大幅に向上します。短い切り花を、大量に、労力を削減して生産し、効率的に運ぶことで、ホームユースに適したサイズ、価格の切り花を、生産者の収益増につなげながら生産することが可能となりました。
定期契約のサブスク向けは出荷計画が立てやすく、生産者の収益安定にもつながります。既存の切り花生産者はもちろんですが、特に新規参入者にとって確実な収益につながり、減り続ける切り花生産への参入障壁を下げることにもつながります。また、従来サブスク業者は業務向けの長い丈の切り花を仕入れ、ホームユースに合った長さに切っていたため、丈の短い規格はサブスク業者の丈調整の手間、コスト、ごみの削減にもつながります。なお、本規格の栽培方法については、近畿大学社会連携推進センター田中尚道教授と株式会社ミヨシ(本社:東京都世田谷区、代表取締役:三好正一)が栽培指導を行っています。
簡易包装による出荷でコスト削減
■コロナ禍で拡大、切り花のサブスク
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、切り花の業務需要は激減しました。一方で、家の中で花を楽しみたい需要から切り花のEC・サブスクサービスは大きく利用者を伸ばしています。花のEC・サブスクの市場規模は現在約260億円(大田花き推計。数字には一部鉢物を含むが、切り花が非常に高い割合を占める)。花全体としてはまだ小さいですが、コロナ禍が落ち着いた今でもEC・サブスクの需要は堅調で、「2023年には市場規模300億円の大台に乗る」(大田花き推計)とも試算されています。当社と大田花きは切り花のサブスクサービスを今後メジャーな花の楽しみ方の一つになるととらえ、今回を皮切りに、本取り組みを全国へと広げていきます。
■ホームユース向けトルコギキョウと「ソロ PF」シリーズ
ホームユース向け切り花で求められる条件は(1)購入後しばらく家で楽しめる日持ち性、(2)購入しやすい価格帯、(3)限られたスペースで販売・鑑賞するため小さめのサイズ、です。サブスク向けでは消費者の手元に届くまで輸送を経るため、とりわけ日持ち性が重視されます。当社の「ソロ PF」シリーズは世界初の無花粉トルコギキョウで、花粉が発生しないため受粉せず、非常に日持ち性が優れます。
左:従来品種
右:無花粉タイプ 一重咲きホワイト