金曜日, 11月 22, 2024
ホーム商品サービスセツロテック独自のゲノム編集技術を活用してゲノム編集ニワトリ個体の作出に成功

セツロテック独自のゲノム編集技術を活用してゲノム編集ニワトリ個体の作出に成功

ゲノム編集受託サービスを提供する株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)は、独自のゲノム編集技術・ノウハウを活用し、国内の大学発ベンチャーとして初めて、ゲノム編集したニワトリ個体を作出することに成功しました。この成果は、ゲノム編集技術による効率的なニワトリ新品種作出につながるものであり、家禽類の育種改良の高速化や高付加価値化が実現できます。セツロテックは、本成果を含め、豊田通商株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:貸谷伊知郎、以下「豊田通商」)のサポートを受け、ニワトリ事業での研究開発を進めています。今後は、本成果を基盤として、豊田通商をはじめとするニワトリ事業を展開する企業と広く共同開発を進め、消費者が求める形質を持ったゲノム編集ニワトリ新品種の開発に向けて取り組んでまいります。

セツロテック独自のゲノム編集技術を活用してゲノム編集ニワトリ個体の作出に成功のサブ画像1

【本件の背景】

ニワトリは、家禽として大変有用であり、食肉だけでなく鶏卵も含め、私たちの食生活に欠かすことのできない身近なものです。また、近年では、食品としての利用だけでなく、鶏卵由来のワクチンやバイオ医薬品などの生産にも利用されるなど、その利用価値は非常に高いものとなっています。しかし、現在の養鶏業は、新たな感染症への対策や気候変動への対応、アニマルウェルフェアの向上などの様々な課題を抱えており、新たな品種改良技術の開発・普及が求められていました。
ゲノム編集技術を多様な生物種へ適用し、新品種の開発を目指す「ゲノム編集育種」は、世界のホットトピックの1つであり、日々さまざまな開発が行われています。マウスやブタなどの哺乳類の場合、体外受精等によって受精卵を比較的容易に入手できるため、受精直後の受精卵(1細胞期)の段階でゲノム編集を行います。しかし、ニワトリの受精卵(1細胞期)は、殻がついていない状態でメス体内(輸卵管)にあり、また、体外に産み落とされた有精卵はすでに20,000細胞以上へ分裂しています。このため、受精卵(1細胞期)や、産み落とされた有精卵の段階でのゲノム編集は困難です。そこで、精子や卵子の「起源」となる始原生殖細胞(PGC)の段階でゲノム編集を行い、ゲノム編集PGCをニワトリ個体に移植することで、ゲノム編集ニワトリを作出することが一般的です。PGCを活用したゲノム編集ニワトリ作製には、PGCを安定的に培養する技術、PGCをゲノム編集する技術、PGCをレシピエントニワトリに移植する技術といった、非常に高度な技術が求められます。そのため、これまでゲノム編集ニワトリの作製に成功したという報告は少なく、大学や公的研究機関などの限られた施設でのみ実施されてきました。

【研究内容】

セツロテック研究開発部の竹本龍也、陳奕臣らの研究グループは、ニワトリ胚からPGCを摘出(上図①)し、体外培養後、PGC特異的に発現するcVasa遺伝子座に蛍光レポーター遺伝子mCherryを挿入するゲノム編集(cVasa-mCherry)を行いました(非Cas9型ゲノム編集因子を使用、上図②)。得られたゲノム編集PGCを、レシピエントニワトリに移植しました(上図③)。このレシピエントニワトリの生殖巣(精巣・卵巣)には、移植されたゲノム編集PGCが定着しています。成鶏になったニワトリ(F0 個体)を野生型ニワトリとかけ合わせ(上図④)、ゲノム編集ニワトリ個体(F1)を誕生させることに成功しました(上図⑤、下図A)。

セツロテック独自のゲノム編集技術を活用してゲノム編集ニワトリ個体の作出に成功のサブ画像2

 

ゲノム編集ニワトリを解析したところ、設計したとおりに、cVasa遺伝子座に蛍光タンパク質遺伝子が挿入され、

cVasa遺伝子の発現と一致して、精巣・卵巣で赤い蛍光が確認されました(=ニワトリ個体への新たな形質の付与、下図B)。これらのF1ニワトリ個体を構成するすべての細胞は、cVasa-mCherryヘテロ接合型となり、次世代以降にもこの遺伝型・形質が維持されます。

【消費者に新たな価値を提供するゲノム編集ニワトリの作出へ】

徳島大学発ベンチャーであるセツロテックでは、生物の遺伝子を自在に編集できるゲノム編集技術を活用し、顧客のニーズに応じて、農業畜産分野での新品種開発に取り組む研究開発受託サービス「PAGEs」(https://pages.setsurotech.com/)を展開しています。本研究開発では、ゲノム編集ニワトリ作出技術の確立を目的とし、cVasa遺伝子の発現を蛍光タンパク質で可視化することをモデルとして、ゲノム編集ニワトリの作製を実施しました。今後は、本成果を基盤として、豊田通商をはじめとするニワトリ事業を展開する企業と広く共同開発を進め、消費者が求める形質を持ったゲノム編集ニワトリ新品種の開発、育種改良の高速化や高付加価値化など、効率的な新品種作出に向けて取り組んでまいります。

【用語説明】

1) PGC(Primordial germ cell):始原生殖細胞。将来の精子や卵子のもとになる細胞。
2) cVasa遺伝子:ニワトリの生体内で、始原生殖細胞においてのみ発現する遺伝子。
3) mCherry:赤い蛍光を発するイソギンチャク由来のタンパク質。目印として使われる。
4) レシピエントニワトリ:移植作業を受ける側のニワトリ。

 

【セツロテックについて】

セツロテックは、徳島大学で培った技術とノウハウを基に2017年に創業した、徳島大学発ベンチャー企業です。徳島大学の竹本龍也(代表取締役会長CTO)らは、2015 年に「ゲノム編集マウスを簡便にかつ高効率に作製できる手法」を開発しました(特許6980218号)。また、徳島大学の沢津橋俊(取締役CSO)は、培養細胞で高効率ゲノム編集を実現するVIKING法を開発しました(特許6956995号)。さらに、独自の新規ゲノム編集因子ST8(特許7113415号)を開発し、医療分野のほか、農業や畜産分野において品種改良を高速化する研究開発を進めています。セツロテックは、これらの独自技術を活用し、アカデミア・企業の研究者向けのゲノム編集受託サービスを展開するほか、Cas9代替因子を活用したゲノム編集生物を広く産業界に提供し、ゲノム編集産業を開拓することを目指すPAGEs(Platform App(lication) using Genome Editing by Setsurotech)事業を展開しています。「徳島をゲノム編集産業発祥地に」というビジョンを掲げ、地域産業に貢献していきます。

◆株式会社セツロテックの概要
   1. 商号:株式会社セツロテック
   2. 代表者:代表取締役 竹澤 慎一郎
   3. 所在地:徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15 藤井節郎記念医科学センター
   4. 設立:2017年2月22日
   5. 主な事業の内容:ゲノム編集による研究支援サービスならびに新品種の事業化
   6. URL:https://www.setsurotech.com/
 
 

RELATED ARTICLES

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

Most Popular

Recent Comments