MSC(海洋管理協議会)の漁業認証を取得した漁業と非認証漁業の対象資源を比較した、これまでで最も包括的な分析が学術専門誌『Frontiers in Marine Science』に発表されました( https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2022.818772/full )。
この研究は、MSC認証漁業が対象とする80の水産資源の資源量に関する公開データと、非認証漁業が対象とする90以上の水産資源の資源量に関するデータとを比較したものです。
分析の結果、MSCの持続可能な漁業のための国際規格を満たした認証漁業が対象とする資源は、より一貫して持続可能な資源量を維持する範囲内で漁獲されていることがわかりました。また、MSC認証漁業が対象としている資源は、非認証漁業が対象としている資源と比較して、持続可能な管理基準値よりも高いレベルにあるものが多いことがわかりました。
この研究は、MSC「海のエコラベル」が付いた水産物は、過剰漁獲を行わず、適切に管理された漁業によって漁獲されたものであるというMSCの主張を証明するものになりました。
分析対象の魚種は、マグロ・カツオ類、小型浮魚、白身魚など多岐にわたり、地理的には、カナダの東海岸と西海岸、日本、太平洋、アフリカ南部、アメリカ東海岸、大西洋をカバーしています。
過剰漁獲の増加が続き、世界の水産資源の3分の1以上(35%)が過剰漁獲される中、この問題を解決するには、漁業の適切な管理が不可欠であることが調査で明らかになりました。持続可能であるように適切に管理された漁業は、長期的に見て生産性が高く、増え続ける世界の人口にとって重要なタンパク源を確保することにつながります。
MSC科学・規格最高責任者のロハン・カリーは、次のように述べています。「過剰漁獲に対する取り組みを加速させることは、依然として世界的に緊急性の高い優先事項です。この問題を解決する方法を私たちは知っています。MSC漁業認証規格で求められている漁業管理の最優良事例を実施することで、持続可能な成果をもたらすことができることがこの調査で示されています。各国政府、漁業管理機関、漁業者、そして持続可能な漁業を支持するすべての人々が、この成果に勇気づけられることでしょう」
注記:
- これまで発表されたGutierrezら(2012)、Froese & Proelss(2012)、Optizら(2016)などの研究では、より限定的なデータセットが使用されていました。
- この研究では、MSC認証漁業が対象とする資源と非認証漁業が対象とする資源を比較するために、世界中の独立した科学者が収集し公開している資源評価データを使用しました。
- 資源状態を判断するために、論文では、以下の2つの資源量の指標を使用しました。
- Bmsy:最大持続生産量(MSY)での漁獲を行なった場合のバイオマス。多くの漁業管理機関が「目標管理基準値」としているのがこのBmsyです。
- Blim:資源の加入が阻害される状態、つまり過剰漁獲されているかどうかを判断するために使用される資源量の基準点。Blimは避けるべき限界値と考えられています。
MSC(海洋管理協議会)について
将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所をおき世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は世界約100か国で51,000品目以上、日本では1,000品目以上が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、第三者審査機関による審査を通じて実証することが求められます。
詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください:https://www.msc.org/jp
MSC「海のエコラベル」について
MSCの厳格な認証規格に適合した持続可能な漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それがMSC「海のエコラベル」です。