長野県上田市(以下「上田市」)、信州うえだ農業協同組合、有限会社信州うえだファーム、長野県上田農業農村支援センター、東日本電信電話株式会社 長野支店(以下「NTT東日本」)、株式会社NTTアグリテクノロジーは、「地域おこし協力隊※」を活用し、新規就農者を農業デジタル人材として育成することで、地域におけるスマート農業の実装を推進させ、持続可能な農業をめざすプロジェクトを開始します。
※都市地域から地方などに住民票を異動し、農林水産業への従事などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組み
1.背景
上田市においても人口減少、少子高齢化などに起因する様々な課題が顕在化し、特に地域の重要な産業である農業はその影響が顕著となっております。こうした課題に対処すべく、デジタルトランスフォーメーション(DX)への期待が高まる中、上田市は、未来に向かって持続可能な都市として更に発展していくために、「上田市スマートシティ化推進計画」を策定して活動しています。
本プロジェクトでは、上田市スマートシティ化に向けた取り組みの一環として、農業デジタル人材の育成を通じ、農業の「生産性向上」や「省力化」につなげ、持続可能な地域の実現をめざします。
2.取り組み内容
(1)「地域おこし協力隊」の新規就農希望者をスマート農業の実践および牽引するリーダーに育成農業の担い手が高齢化・減少する中、上田市は信州うえだ農業協同組合・有限会社信州うえだファームと連携し、「地域おこし協力隊」として、都市地域から新規就農をめざす方を誘致・支援します。こうした新規就農希望者に、市内の遊休農地・施設などを使用し就農に必要な研修やスマート農業に取り組む環境を提供することで今後求められる持続可能な地域農業を実践するリーダーとして育成します。
(2)新規就農希望者を農業デジタル人材として育成
新規就農には栽培などのスキル習得が必須ですが、経験や勘による栽培方法の習得には時間を要することから、スマート農業により不足する経験や勘を補完していきます。「地域おこし協力隊」で育成されるリーダーと新規就農希望者らが共に広範なスマート農業のソリューションを試すことにより、地域に求められるスマート農業の活用シーンを創出し、新規就農希望者を地域に合った農業デジタル人材として育成していきます。
3.実施場所
合計5農場
・上田市農業バイオセンターの1農場(上田市下之郷808番地)
・有限会社信州うえだファームの2農場(上田市吉田241番地、小泉1037番地)
ほか、経験豊富な市内農家の2農場
4.農業デジタル人材育成に向けた活動
(1)「データに基づく栽培管理」と「スマートグラスを活用した遠隔営農相談」の実践
IoTセンサーにより農場の環境データ(温度・湿度など)を収集し、データに基づく栽培管理を行います。また栽培に関する不明点はスマートグラスを装着し、遠隔で農業指導機関(信州うえだ農業協同組合・長野県上田農業農村支援センター)とリアルタイムで接続し、農場の状況をオンラインで共有し確認、相談できる環境を整備します。データとリアルタイム映像を組み合わせたスマート農業を自ら実践することで、デジタルを活用した栽培スキルの向上につなげます。
(2)AIを活用した農産物選果スキルの習得
経験豊富な農家が保持する選果感覚をAIに反映した「AI選果識別サポートシステム」を開発し、活用します。新規就農者の的確な選果作業をサポートすると共に、経験豊富な農家の感覚を効果的に習得していきます。的確な選果は地域農産物の品質やブランドの維持向上にも効果が見込まれています。
5.機関団体各社の役割
・上田市:新規就農希望者の受け入れ支援とプロジェクト全体総括
・信州うえだ農業協同組合:新規就農希望者に対する営農技術指導
・有限会社信州うえだファーム:農場での作業指導や安全講習・就農に必要な地域とのコーディネート
・長野県上田農業農村支援センター:新規就農希望者に対する就農計画の作成支援や就農後の経営指導
・NTT東日本 長野支店:上田市スマートシティ化推進パートナーとしてのICT活用サポート
・NTTアグリテクノロジー:農業デジタル人材育成全般
6.今後の展開
本プロジェクトでスマート農業を実践し、経験やスキルを積み重ねることで、2024年度末までに地域おこし協力隊の新規就農者を農業デジタル人材として育成します。その後は上田エリアでのスマート農業を実装する地域のリーダーとして活躍していただき、持続可能な農業の実現につなげていくことをめざします。
なお、本プロジェクトは上田市が掲げる「上田市スマートシティ化推進計画」に基づく取り組みであり、令和4年度SDGs未来都市計画にも位置付けられる予定です。